浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J17_0771A01: | 集り居たる席にて。例のごとき本願念佛の有がたき |
J17_0771A02: | 旨を説聞せたまふ。其傍に黠慧武士あり。禪法のか |
J17_0771A03: | かはしをきき覺へたるありさまにて。師をあざ笑ふ |
J17_0771A04: | こころゆへ。古則など拈提し。我は顏にて鼻のあた |
J17_0771A05: | りを。をごめかしてほこりゐたりけるときに。師た |
J17_0771A06: | ちまち彼人に對し。勵聲自ら以八以八と二聲呼び |
J17_0771A07: | て。汝會すやいなやとのたまへば。彼おとこおどろ |
J17_0771A08: | き閉口して答なし。師のいはく。咄咄。多言すること |
J17_0771A09: | なかれ。這筒の大道は言語のおよぶ所にあらず。唯 |
J17_0771A10: | 自己に廻光返照して猛に精彩をつけ。あしたに參 |
J17_0771A11: | じ。ゆふべに參じ。行じ究め坐し究め。父母未生以 |
J17_0771A12: | 前本來の面目を徹見せんこそ眞修行底なるべけれ。 |
J17_0771A13: | しからずして唯口頭三昧のみなるは畵餠の飢をすく |
J17_0771A14: | はざるがごとし。眼光落地のとき。七顚八倒閻羅老 |
J17_0771A15: | 子の鐵棒を喫するの日あることあらんと。しめされ |
J17_0771A16: | ければ彼のをとこ舌を卷てしりぞきぬ。 |
J17_0771A17: | ○又或禪寺にいたり僕のごとく事へて居られしと |
J17_0771B18: | き。水風呂の湯をわかしながら念佛せられければ。 |
J17_0771B19: | 其寺の禪師。風呂桶の内より汝は淨土宗なりやと問 |
J17_0771B20: | かけらる。師すなはちいかにも其通りと返答有。と |
J17_0771B21: | きに禪師申さるる樣は然らば汝祖師善導のごとく佛 |
J17_0771B22: | を吹出して見せよと。師こたへていはく禪師もまた |
J17_0771B23: | 達磨のごとく蘆にのりて川をわたりて見せたまへ其 |
J17_0771B24: | とき我も又佛を吹て見せまふさんと。禪師そのまま |
J17_0771B25: | 閉口して驚歎せられけり。 |
J17_0771B26: | ○美作誕生寺は元祖大師降靈の地にして四百餘年梵 |
J17_0771B27: | 風相續せり。しかるに備播作三州大守黄門宇喜田直 |
J17_0771B28: | 家は異流を信じて念佛をきらひ。天正六年五月二十 |
J17_0771B29: | 五日僧俗數百人を帥ひて。迅雷のとどろくがごとく |
J17_0771B30: | 誕生寺へをしよせ。殿堂を破却して佛像をうちくだ |
J17_0771B31: | き經卷をやきすて。須臾の間に荒墟となしさりぬ。元 |
J17_0771B32: | 祖の木像はある人急にいだきとり井に投入て難をま |
J17_0771B33: | ぬがれたりき。明年信長公命を下し江州安土におゐ |
J17_0771B34: | て貞安老人と宗旨を抗論し。かの徒遂に負處に墮し |