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J2620 以八上人行状記 素信 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0771A01: 集り居たる席にて。例のごとき本願念佛の有がたき
J17_0771A02: 旨を説聞せたまふ。其傍に黠慧武士あり。禪法のか
J17_0771A03: かはしをきき覺へたるありさまにて。師をあざ笑ふ
J17_0771A04: こころゆへ。古則など拈提し。我は顏にて鼻のあた
J17_0771A05: りを。をごめかしてほこりゐたりけるときに。師た
J17_0771A06: ちまち彼人に對し。勵聲自ら以八以八と二聲呼び
J17_0771A07: て。汝會すやいなやとのたまへば。彼おとこおどろ
J17_0771A08: き閉口して答なし。師のいはく。咄咄。多言すること
J17_0771A09: なかれ。這筒の大道は言語のおよぶ所にあらず。唯
J17_0771A10: 自己に廻光返照して猛に精彩をつけ。あしたに參
J17_0771A11: じ。ゆふべに參じ。行じ究め坐し究め。父母未生以
J17_0771A12: 前本來の面目を徹見せんこそ眞修行底なるべけれ。
J17_0771A13: しからずして唯口頭三昧のみなるは畵餠の飢をすく
J17_0771A14: はざるがごとし。眼光落地のとき。七顚八倒閻羅老
J17_0771A15: 子の鐵棒を喫するの日あることあらんと。しめされ
J17_0771A16: ければ彼のをとこ舌を卷てしりぞきぬ。
J17_0771A17: ○又或禪寺にいたり僕のごとく事へて居られしと
J17_0771B18: き。水風呂の湯をわかしながら念佛せられければ。
J17_0771B19: 其寺の禪師。風呂桶の内より汝は淨土宗なりやと問
J17_0771B20: かけらる。師すなはちいかにも其通りと返答有。と
J17_0771B21: きに禪師申さるる樣は然らば汝祖師善導のごとく佛
J17_0771B22: を吹出して見せよと。師こたへていはく禪師もまた
J17_0771B23: 達磨のごとく蘆にのりて川をわたりて見せたまへ其
J17_0771B24: とき我も又佛を吹て見せまふさんと。禪師そのまま
J17_0771B25: 閉口して驚歎せられけり。
J17_0771B26: ○美作誕生寺は元祖大師降靈の地にして四百餘年梵
J17_0771B27: 風相續せり。しかるに備播作三州大守黄門宇喜田直
J17_0771B28: 家は異流を信じて念佛をきらひ。天正六年五月二十
J17_0771B29: 五日僧俗數百人を帥ひて。迅雷のとどろくがごとく
J17_0771B30: 誕生寺へをしよせ。殿堂を破却して佛像をうちくだ
J17_0771B31: き經卷をやきすて。須臾の間に荒墟となしさりぬ。元
J17_0771B32: 祖の木像はある人急にいだきとり井に投入て難をま
J17_0771B33: ぬがれたりき。明年信長公命を下し江州安土におゐ
J17_0771B34: て貞安老人と宗旨を抗論し。かの徒遂に負處に墮し

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