ウィンドウを閉じる

J2620 以八上人行状記 素信 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0770A01: 藝州嚴島は神德靈威にして天下の勝境なりと聞て登
J17_0770A02: 臨のこころざしあり。爰に善導寺の檀越なる人と嚴
J17_0770A03: 島の住人に小河及西といふものと舊識なりければ。
J17_0770A04: 彼檀越の書簡を得て渡海したまへり。師島上にいた
J17_0770A05: りて見わたしたまふに聞しにまさりたる靈境なりけ
J17_0770A06: れば。殊に捿神の地なりとよろこびたまへり。彼書
J17_0770A07: 簡を小河氏へつたへたまひけるに。宿世の因縁にや
J17_0770A08: 一たび相見してより深く崇敬のこころざしあり。法
J17_0770A09: 要を問ひ示誨をうけて渴仰いよいよ髓に徹す遂に土
J17_0770A10: 地をゑらび神社の東の岡に一宇の草庵をむすびて常
J17_0770A11: に供養をなしたてまつりける。時の人これを名づけ
J17_0770A12: て岡の菴といふ今の光明院これなり。はじめ師嚴島
J17_0770A13: の近里に宿せられけるとき。夢中に明神來現ありて
J17_0770A14: つげたまはく我はいつくしま明神なり久しく師の道
J17_0770A15: 德を仰く。願はくはわれしまにありて興法利生した
J17_0770A16: まへと。夢さめて島にいたり一覽せられけるに紫の
J17_0770A17: 靄のごとくなるもの島のきしにたなびけり。實に不
J17_0770B18: 可思議のこと共なり。
J17_0770B19: ○師一日大明神の寶前にありて法施をささげたま
J17_0770B20: ふ。時に。いづちともなく貴女壹人きたりて相見し
J17_0770B21: たまへり。その儀相はなはだ怖るべし。其後時時草
J17_0770B22: 菴に降臨し給ふを人或はこれをしるとなり。むかし
J17_0770B23: 加茂大明神。吉水の禪室に降臨したまふ古今同轍な
J17_0770B24: りとて人人たふとみあへり。
J17_0770B25: ○師また一日柱に靠りて日課念佛す。老衰のくたぶ
J17_0770B26: れにや。しばしば眠りたまひぬ。門弟等竊にうかが
J17_0770B27: ひ見るに頭光朗にして闇夜の星のごとし。或は又圓
J17_0770B28: 光の内にましませしを拜せる事度度なり。往古吉水
J17_0770B29: 大師端座念佛のとき光明を現し。また橋をわたりた
J17_0770B30: まひしとき頭光をあらはしたまふと古今一揆なる靈
J17_0770B31: 應なり。
J17_0770B32: ○師修行功積りて心地も朗然たりといへども。唯三
J17_0770B33: 佛大悲の趣を仰ぎ二祖相承の旨をあがめて。自行化
J17_0770B34: 他偏に稱名念佛を縡としたまへり。ある所にて道俗

ウィンドウを閉じる