浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J17_0736A01: | 居せんにはとて衣鉢を身に隨がへ渡口に出て船師黑 |
J17_0736A02: | 助といふものの船にめされけり年來歸依の道俗おも |
J17_0736A03: | ひまふけぬ事なればあはて出たちかさなりて袖をひ |
J17_0736A04: | き手をとりいましばしととどめけれど上人更にみか |
J17_0736A05: | へり給ふ氣色もなし人人せんかたなくて行衞いつ國 |
J17_0736A06: | とおもひさだめ給ふぞとたつねければ時に上人 |
J17_0736A07: | いづみ川雲井の空にながれてし |
J17_0736A08: | いま行末は風にまかせて |
J17_0736A09: | と答へ給ふにおりふし風おこりて船は流のはやきに |
J17_0736A10: | したかひてとをざかりけるとぞ。 |
J17_0736A11: | 上人それより續喜郡飯岡村に行き三の峯に上りて四 |
J17_0736A12: | 方を眺望し給ふに亂山四面に圍み淸河遠く流る誠に |
J17_0736A13: | 紅塵不到の絶境にして沙門の棲息すべき勝地なり麓 |
J17_0736A14: | の人かたりけるは往昔は精舍ありて殿堂いからをな |
J17_0736A15: | らべしがいまはかく荒涼の地となれりといひければ |
J17_0736A16: | 上人も感慨あさからずそののち奧林三良兵衞なるも |
J17_0736A17: | のとあひはかりて絶たるを起して再び僧居の地とな |
J17_0736B18: | し給へり今の西方寺これなり。 |
J17_0736B19: | 繪 |
J17_0736B20: | 寬永十五年上人八十七歳の時三の峯に石佛三軀を刻 |
J17_0736B21: | 立し給へり東の峯には藥師如來を安置し藥師經一部 |
J17_0736B22: | を書寫して其の像の下に埋南の峯には釋迦文佛を安 |
J17_0736B23: | 置して法華壽量品を埋西の峯には阿彌陀佛の像を立 |
J17_0736B24: | て彌陀經を埋むさて十五日は彌陀感應の日なりとて |
J17_0736B25: | 毎月遠近の道俗花を折り香をたづさへて西の峯に上 |
J17_0736B26: | りて彌陀佛を供養し奉る其の日は上人も彌陀佛の前 |
J17_0736B27: | にて參詣の道俗に對して十念を授け本願の深意稱名 |
J17_0736B28: | の巨益などこまやかに勸導し給ふそれよりながく恒 |
J17_0736B29: | 格となりぬ。 |
J17_0736B30: | 繪 |
J17_0736B31: | 上人其の年の冬のころより微疾に染みて氣力日日に |
J17_0736B32: | おとろへ眠食常にかへりがたければ終焉はどちかき |
J17_0736B33: | にありとおほしぬ翌年の正月十五日にはわきて彌陀 |
J17_0736B34: | 參詣の人もおおくみなみな西の峯になみ居て上人を |