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J2580 袋中上人伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0734A01: 侍る。
J17_0734A02:
J17_0734A03: 江州矢橋の郷に酒家ありけり女房貪欲の心深くして
J17_0734A04: ひそかに旅僧を殺せりかの亡魂いたく恨て毎日酒帘
J17_0734A05: の下に來りて家内をきとみいれければ女房忽に狂亂
J17_0734A06: せり或人上人自筆の名號をかの酒帘にかけ置ければ
J17_0734A07: 惡靈ふたたび來ことなかりしとぞ。
J17_0734A08:
J17_0734A09: 洛東粟田口某の女房平産すその夜の夢に高僧來りて
J17_0734A10: 我汝を守護せしゆへに産生難なかりきといひけれは
J17_0734A11: いふかしくおもひてその名をとひけれは我名は袋中
J17_0734A12: 汝常にわれを信仰せしゆへにわれまた汝を守れりと
J17_0734A13: 答へ給へば夢たちまち覺ぬ女房おもひけるは我佛壇
J17_0734A14: の内に上人の名號を掛置て朝夕に念すること久しもし
J17_0734A15: かかるゆへにもやありけんとやがて三條法林寺に詣
J17_0734A16: でで上人の肖像を拜するに夢中に見し僧の顏貌と毫
J17_0734A17: 髮もたかわざりければ信心肝に銘して感涙を流しけ
J17_0734B18: るとぞ聞人みな希有の思をなしぬ。
J17_0734B19: 右二件は上人歿後の益なれども便りにまかせてこ
J17_0734B20: こに記し侍る。
J17_0734B21:
J17_0734B22: 上人七十七歳の時知恩院の主持靈岩和尚より淨土名
J17_0734B23: 越派八祖相承の儀を尋ね給ふことありき上人論辨を綴
J17_0734B24: りて名越には彌勒菩薩を八祖の第一とすること深きい
J17_0734B25: はれありと敎理を引てくはしく曉諭せらる岩和尚再
J17_0734B26: 三珍翫して所論の趣道理極成せりと稱美して批評を
J17_0734B27: 加へ給ふ此書いまに三條法林寺に現在せり。
J17_0734B28:
J17_0734B29: 上人衰朽の身にして老骨を勵まし晝夜六時に禮誦念
J17_0734B30: 佛おこたりなかりけり寬永七庚午三月廿三日例時日
J17_0734B31: 中の勤おはりて上人拍掌して呼給ひけれは弟子良輭
J17_0734B32: いかさまのことにやと思ひていそきまいりけるに上人
J17_0734B33: 佛前をさしてのたまはく瓶花の上に眞佛來現し給へ
J17_0734B34: り汝みるや否やと良輭頭を擧てみるに金色 彌陀如

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