浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J17_0733A01: | 繪 |
J17_0733A02: | 此心光庵はもとより人家をへたてて俗塵の氣たへ幽 |
J17_0733A03: | 深寂寞の地なれは老邁の道容よするにいとよしとて |
J17_0733A04: | 十三年の間住居し給へり庵の巽の方に杉木二本あり |
J17_0733A05: | しに有夜杉の曉にあやしき聲しけれは上人おぼつか |
J17_0733A06: | なくおぼして扇をひらき空にむかひて誰人かあると |
J17_0733A07: | 問はせ給へば空中より是は愛宕山より鷲峰山海住山 |
J17_0733A08: | に飛行するものなり此社の邊に大德の僧いますよし |
J17_0733A09: | うけたまはりしゆへに結縁のためにしばしここにと |
J17_0733A10: | まりい候とこたへければ上人合掌してねんごろに十 |
J17_0733A11: | 念を授けられけるにありかたき法施の力にて久しき |
J17_0733A12: | 重苦を免かれ候其恩謝のためにといひておそろしき |
J17_0733A13: | 形を現して天狗の術通をなしてみせけるよし上人の |
J17_0733A14: | 末弟意俊といふ僧ものかたりし侍る。 |
J17_0733A15: | 繪 |
J17_0733A16: | 上人暮ごとに施餓鬼を修し神呪をとなへ加持しおは |
J17_0733A17: | りて其施食を手より地に落し給ふに中間にて彼食い |
J17_0733B18: | づくともなくみなうせてあとなかりき實に群鬼の集 |
J17_0733B19: | り居てあらそひ受し故ならんと人人不思議の思をな |
J17_0733B20: | しぬ。 |
J17_0733B21: | 繪 |
J17_0733B22: | 有時恆例の施食おはりて後上人人もなき庭上にうち |
J17_0733B23: | 向て汝はいまになほ迷て來しや哀れなるかな得脱す |
J17_0733B24: | ることの何そおそきやと仰られしこれは惡趣受苦のも |
J17_0733B25: | ののいくたびも現前して上人の眼にかかりしゆへな |
J17_0733B26: | らん。 |
J17_0733B27: | 繪 |
J17_0733B28: | 寬永三年の春彼岸の中日にあたりて天神の社の邊へ |
J17_0733B29: | 郡内の男女群集せり上人六字の名號に面面の法名を |
J17_0733B30: | かき加へ參詣の男女に一鋪つつ手づから授け鳥居の |
J17_0733B31: | 下石段の上に立て十念を授け給ひてこまやかに厭欣 |
J17_0733B32: | の道理を勸策しくわしく稱名の功德を演説し給ふ聽 |
J17_0733B33: | 聞の人みなみな渴仰し信伏せすといふことなかりきさ |
J17_0733B34: | れば其名號をば瓶原名號とて今に至まで人人珍敬し |