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J2580 袋中上人伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0730A01: と人人感嘆せざるはなかりき。
J17_0730A02:
J17_0730A03: 上人五十二歳の時入唐の望ありて帝畿を出て西海に
J17_0730A04: おもむき商沽の便船を待て唐土に渡らんと期す或僧
J17_0730A05: 問云頃日佛書おおくわたり上人み給ふや上人云我已
J17_0730A06: に是をみる僧また問暗記せりや上人答大凡大小權實
J17_0730A07: の經論の中に其至要なる文句はみな暗記せり時に彼
J17_0730A08: 僧經論の題目を呼ていかんと問へば上人其經論の至
J17_0730A09: 要の文句逐一に暗誦し給ふ事瀑河の流て速かなるが
J17_0730A10: ごとし上人僧にかたりて我入唐の志あり此故記憶す
J17_0730A11: るなりとそおほせられける扨折節便船ありければ先
J17_0730A12: 琉球に渡り給ひぬ呂宋南蠻の商船を賴むといへども
J17_0730A13: 彼國の人は日本を東夷なりとをそれてかたく拒みて
J17_0730A14: 乘せす時に琉球の國主黄冠馬幸明上人の德風をあふ
J17_0730A15: き歸仰する事深しこれによりて上人を城外の桂林寺
J17_0730A16: に安住せしめて四事の供養備足して缺くことなし黄冠
J17_0730A17: の懇請によりて琉球神道記並琉球往來記を製作し給
J17_0730B18: ふしかるに上人入唐の本意遂げかたくおほしけれは
J17_0730B19: 數數歸錫を催し給へどもかの國の緇素わりなくとど
J17_0730B20: めて別離をゆるさざりければ三年迄は桂林寺に住持
J17_0730B21: し給へりある時上人しきりに出船を催し闔國留むと
J17_0730B22: も今はとまらせ給ふましき氣色なりけれはついに渡
J17_0730B23: 口に送るもの道俗市のごとく既に上人船に召され篙
J17_0730B24: 工纜をとひて風にまかせて行を皆人首をめくらして
J17_0730B25: 帆かげのかくるるまで見返り名殘惜みけるとそ。
J17_0730B26:
J17_0730B27: 上人五十五歳既に歸路におもむきて筑紫善導寺に入
J17_0730B28: 聖光上人の尊像を拜し給ふ聖光上人は鎭西の流祖な
J17_0730B29: れは燒香合十して殊更恭敬を加へ給へり西國旅行の
J17_0730B30: ついでに普く勝跡を尋求し名所を歷觀して城州山崎
J17_0730B31: 大念寺に入り給へり彼住持は上人の舊知音なれば指
J17_0730B32: ををり日をかぞへて上人の歸錫を待うけられぬそれ
J17_0730B33: より橋本西遊寺に入て是遁和尚の影像を拜し給ふ是
J17_0730B34: 遁和尚西遊の中興なれば偈を作りて讃歎して曰。

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