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J2580 袋中上人伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0729A01: 又悉曇の興起梵飜の䚹謬など細辨して重て書簡を投
J17_0729A02: せられけるに密徒大に憤激して梵漢のたがひ事義の
J17_0729A03: 謬など十四箇所かかげ出して其上に六箇の問難を立
J17_0729A04: てて返翰をなせり上人電覽一過してしばしともいは
J17_0729A05: ず即日に操觚をこととして逐一に再破せられけれは
J17_0729A06: 密徒その智辨におそれて更らに一口の拒もなかりけ
J17_0729A07: り上人此時に梵漢對暎集一卷顯し給へり。
J17_0729A08:
J17_0729A09: 上人三十二歳天正十一年癸未の春淨土の血脉論を造
J17_0729A10: り三十三歳麒麟聖財論私釋四卷を製し三十四歳大原
J17_0729A11: 問答端書をあらわし三十六歳啓袋中一卷を出せり又
J17_0729A12: 三十九歳往生要集を披覽し空觀の下にいたりて忽に
J17_0729A13: 法眼をひらき給ふこれより六時勤行をこたりなく六
J17_0729A14: 萬遍の日課退する事なし。
J17_0729A15:
J17_0729A16: 上人四十八歳慶長四年己亥の春岩城の大守深く上人
J17_0729A17: の化導に歸して城内に稱名の道塲を建立して菩提院
J17_0729B18: となづけ上人を招請して法主となし晝夜六時に勤行
J17_0729B19: をこたりなかりき又上人淨土の法門を説て切に勸導
J17_0729B20: せられければ稱名一行城内城外にひろごり老若男女
J17_0729B21: 皆淨土往生の願を發せり其後に寺を城外に移せり今
J17_0729B22: の平の菩提院是なり。
J17_0729B23:
J17_0729B24: 慶長四年關左の境疫疾大に流行して男女貴賤くるし
J17_0729B25: む者多かりきその頃上人菩提院に住し給へり一夕一
J17_0729B26: 老翁忽然として來りて上人の傍に侍す上人問て云汝
J17_0729B27: はこれ誰や答云我は是疫神なり上人云汝なんぞ人を
J17_0729B28: 惱ます事甚しきや翁答云是人みづから惱めりかなら
J17_0729B29: すしもわが所爲にあらすといひをはりて其長三丈ば
J17_0729B30: かりの鬼形に變化せり上人驚く氣色もなくこの疾疫
J17_0729B31: 災いかがせは治せんと仰せけれは時に鬼形小盃に藥
J17_0729B32: を盛りて上人にささぐ上人これを受て普く郷里に施
J17_0729B33: 與し給ふにみな其驗を得て疫疾立どころに愈へぬか
J17_0729B34: かる勝事のありけるも皆是上人道德のいたす所なり

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