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J2580 袋中上人伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0728A01:
J17_0728A02: 上人二十三歳の時大澤闔山の請再三なりければ暫く
J17_0728A03: 圓通寺に掛錫し給ふ此寺は良天上人の高弟良榮上人
J17_0728A04: の草創なり報恩を謝せんがためにあまたの經論を開
J17_0728A05: 講し給ふに聽徒雲集して法雨に潤はずといふことなし
J17_0728A06: 古書祕錄をよび宗門の口决故實又藤田傳法今に圓通
J17_0728A07: 寺に殘れるは皆上人の賜なり。
J17_0728A08:
J17_0728A09: 上人二十五歳の春武城の三縁山に入衆して螢雪のつ
J17_0728A10: とめ倦むこなかりけれは增上の主席その精專を感し
J17_0728A11: て白簱の傳流底を傾けて付與せられけり又足利學校
J17_0728A12: に楞嚴碧岩の講演あり上人千里を遠しとせず行て講
J17_0728A13: 席に列なり他の奧義問答往復してみな决擇し給ふそ
J17_0728A14: の後又東請南訽して諸州を遍歷すといへとも天資曾
J17_0728A15: 閔が孝心を懷き且孝名爲戒の金言を守り給ひければ
J17_0728A16: 双親の安否常にわすれず千里の郷雲くれことになつか
J17_0728A17: しく歸宇の志しきりなりけるにたまたま舊里の楢葉
J17_0728B18: 成德寺より懇請ありけれは幸のおりなれはやがて成
J17_0728B19: 德寺を住持し給へり時に上人二十九歳なりそれより
J17_0728B20: 晨昏に禮をいたし寒暑に心を加へて辛勤さらに倦む
J17_0728B21: 事なく又時をうかがひ便を得て厭欣のすすめ淺から
J17_0728B22: さりければ父母心を西方に歸し淨業をこたりなく臨
J17_0728B23: 終正念にして往生の大事を遂けたまふとなん是ひと
J17_0728B24: へに上人勸導の力なりとみな人隨喜せり。
J17_0728B25:
J17_0728B26: 上人三十歳の秋岩城平の城下に鎌田川といふあり新
J17_0728B27: に橋を造りわたしけり上人其供養の爲とて塔婆一本
J17_0728B28: 川中に建給へりその中おほく梵字を用ひ給ふに近里
J17_0728B29: の密徒此塔婆をみて梵字はこれ我宗の大事更らに他
J17_0728B30: 宗の知所にあらすとて彼塔婆をぬきもて折て捨てけ
J17_0728B31: り上人のたまはくこは放蕩のしはざかな夫梵形は竺
J17_0728B32: 土の字法なり支那日本顯密の兩宗皆通し用ゆ何のゆ
J17_0728B33: へありてかひとり自宗の法として他宗を蔑如するや
J17_0728B34: とて書簡をぞ遣されけり密徒すてて答へざりけれは

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