浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J17_0691A01: | り白雲一むら立あがり。其中に一本の蓮花生ひ出。 |
J17_0691A02: | 口より化佛を吐き九重の寶座に乘給ふ。禪師夢覺て |
J17_0691A03: | 感歎肝に銘じ。直に諏訪に行て上人に謁し右の趣を |
J17_0691A04: | 語られけるに。上人笑を含ての給はく。いしくも尋 |
J17_0691A05: | 給ふものかな。いでその夢を合せて見せなんとて。 |
J17_0691A06: | 諏訪の湖水の雲中に立。紫雲に乘じ上來の粧を現じ |
J17_0691A07: | 給ふ。禪師夢とも現ともわきまへず。五體投地して |
J17_0691A08: | 敬禮せらる。時に湖水忽ち風浪怒號して一ツの貝あ |
J17_0691A09: | らはれ出たり。貝の内より蛇二つ出來り。さも用あ |
J17_0691A10: | りげに近づきぬ。上人これを見て十念を授け給へば。 |
J17_0691A11: | 即時に天人と成りて虚空に飛騰る。雲中より人語を |
J17_0691A12: | なしていはく。我は此池に住こと一千餘年。然るに今 |
J17_0691A13: | ありがたき御法に逢ひ。蛇道の苦をのがれ天上の樂 |
J17_0691A14: | をうく此恩報謝しがたし。我に安産の法あり今是を |
J17_0691A15: | 傳へ侍る。もしくは大悲の一助ともならんかし。是 |
J17_0691A16: | のごとくごとくし給はば立ところに産生せんと口傳して |
J17_0691A17: | 去りぬ。當山一流の傳法にある所の安産の符これな |
J17_0691B18: | り。かの貝を兩蛇の貝といふ。今現に當山にあり。 |
J17_0691B19: | 禪師深く法恩を謝せんが爲に。誓ふて上人の佛身尊 |
J17_0691B20: | 影十餘幅を畫き。普く施與せられける。今現に當山 |
J17_0691B21: | に在所の佛身の肖像。上人自筆の賛あるもの是其内 |
J17_0691B22: | の一なり。此安産の符今にいたり靈驗特にいちじる |
J17_0691B23: | し。或は三日四日産難に苦しみ。既に命絶なんとす |
J17_0691B24: | るもの。此符を服用して快よく出産するあり。或は |
J17_0691B25: | その生るる子。手に件の符をにぎりて出るあり。實 |
J17_0691B26: | に奇なりといふべし。甲州光國寺には開山自作の坐 |
J17_0691B27: | 像の眞影あり。同國寶樹院郡内法國山光明院も又上 |
J17_0691B28: | 人の舊跡なり。 |
J17_0691B29: | ○其頃江戸幡隨意院白道和尚は化を武州に振ひ給 |
J17_0691B30: | ふ。互ひに高風を傳へ聞隨喜し給ふ所に。兩師相互 |
J17_0691B31: | ひに靈夢の告を感ぜらる玆に因て幡隨和尚。書を馳 |
J17_0691B32: | て上人を招請し給ふ。上面に進上彈誓如來と筆せり。 |
J17_0691B33: | 上人即ち彼寺。行給ふ。和尚喜悅の餘り出向ひ手を |
J17_0691B34: | 取て方丈に入り七日七夜寢食を忘れて法話し給ふ。 |