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J2540 弾誓上人絵詞伝 宅亮 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0691A01: り白雲一むら立あがり。其中に一本の蓮花生ひ出。
J17_0691A02: 口より化佛を吐き九重の寶座に乘給ふ。禪師夢覺て
J17_0691A03: 感歎肝に銘じ。直に諏訪に行て上人に謁し右の趣を
J17_0691A04: 語られけるに。上人笑を含ての給はく。いしくも尋
J17_0691A05: 給ふものかな。いでその夢を合せて見せなんとて。
J17_0691A06: 諏訪の湖水の雲中に立。紫雲に乘じ上來の粧を現じ
J17_0691A07: 給ふ。禪師夢とも現ともわきまへず。五體投地して
J17_0691A08: 敬禮せらる。時に湖水忽ち風浪怒號して一ツの貝あ
J17_0691A09: らはれ出たり。貝の内より蛇二つ出來り。さも用あ
J17_0691A10: りげに近づきぬ。上人これを見て十念を授け給へば。
J17_0691A11: 即時に天人と成りて虚空に飛騰る。雲中より人語を
J17_0691A12: なしていはく。我は此池に住こと一千餘年。然るに今
J17_0691A13: ありがたき御法に逢ひ。蛇道の苦をのがれ天上の樂
J17_0691A14: をうく此恩報謝しがたし。我に安産の法あり今是を
J17_0691A15: 傳へ侍る。もしくは大悲の一助ともならんかし。是
J17_0691A16: のごとくごとくし給はば立ところに産生せんと口傳して
J17_0691A17: 去りぬ。當山一流の傳法にある所の安産の符これな
J17_0691B18: り。かの貝を兩蛇の貝といふ。今現に當山にあり。
J17_0691B19: 禪師深く法恩を謝せんが爲に。誓ふて上人の佛身尊
J17_0691B20: 影十餘幅を畫き。普く施與せられける。今現に當山
J17_0691B21: に在所の佛身の肖像。上人自筆の賛あるもの是其内
J17_0691B22: の一なり。此安産の符今にいたり靈驗特にいちじる
J17_0691B23: し。或は三日四日産難に苦しみ。既に命絶なんとす
J17_0691B24: るもの。此符を服用して快よく出産するあり。或は
J17_0691B25: その生るる子。手に件の符をにぎりて出るあり。實
J17_0691B26: に奇なりといふべし。甲州光國寺には開山自作の坐
J17_0691B27: 像の眞影あり。同國寶樹院郡内法國山光明院も又上
J17_0691B28: 人の舊跡なり。
J17_0691B29: ○其頃江戸幡隨意院白道和尚は化を武州に振ひ給
J17_0691B30: ふ。互ひに高風を傳へ聞隨喜し給ふ所に。兩師相互
J17_0691B31: ひに靈夢の告を感ぜらる玆に因て幡隨和尚。書を馳
J17_0691B32: て上人を招請し給ふ。上面に進上彈誓如來と筆せり。
J17_0691B33: 上人即ち彼寺。行給ふ。和尚喜悅の餘り出向ひ手を
J17_0691B34: 取て方丈に入り七日七夜寢食を忘れて法話し給ふ。

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