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J2540 弾誓上人絵詞伝 宅亮 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0690A01: に。上人の異相に驚き天魔鬼神かと怪しみ怖れて往
J17_0690A02: 來既に絶ければ。市町薪に乏しく成りぬ。已ことを
J17_0690A03: 得ずして列卒を催し山を狩て糺明する所に。思はず
J17_0690A04: も上人柔和忍辱のありさまにて稱名聲澄わたり聞え
J17_0690A05: ぬれば。各各隨喜の涙を流し。藤や葛を取集め。木
J17_0690A06: の枝を結びつなぎて輿に作り。上人を舁のせて麓の
J17_0690A07: 里に歸り。各各供養禮拜し貴賤群集して利益日日に
J17_0690A08: 盛なり。其行化の跡寺と成て彈誓寺と號す其外佐州
J17_0690A09: の内に上人の舊跡五六箇寺あり。
J17_0690A10: ○上人の法化既に國中に普くして念佛申さぬ人もな
J17_0690A11: く名號かけぬ家も希なり。時に日蓮敎の俗あり竊に
J17_0690A12: 上人の德をしたひ名號を受たく志し。料紙をも調へ
J17_0690A13: 置けれども。我本宗を憚り怖れて空しく月日を過せ
J17_0690A14: しが。いとど求むる心のやる方なく。人傳ながら願
J17_0690A15: を立けるに。上人微笑して。その名號ははや既に授
J17_0690A16: け畢ぬと告給ふ、思はずながら立歸りてかくと告る
J17_0690A17: に。彼人驚き件の料紙を。筥の内より取出して披き
J17_0690B18: 見るに。名號題目相並べて明らかに書給へり。信心
J17_0690B19: 髓に徹して渴仰彌增し。永く家の重寶と崇め奉り
J17_0690B20: き。
J17_0690B21: ○佐州の化縁既に繁榮なりければ。餘國も又結縁
J17_0690B22: あらまほしく甲斐信濃の境に歸り。大に利益を施し
J17_0690B23: 給ふ。諏訪の山邊の唐澤に始めて一宇を造立し。光
J17_0690B24: 明山阿彌陀寺と號す。晝夜六時の勤行に參詣の輩市
J17_0690B25: をなしける飯田の阿彌陀寺大町の彈誓寺松本の念來
J17_0690B26: 寺百瀨の昌念寺雲照院も上人を以て開基とし念佛不
J17_0690B27: 退の道塲なり。
J17_0690B28: ○其頃甲州八代に故心と云禪師あり。深く上人に歸
J17_0690B29: してやんごとなき念佛の行者なり。師を重んずるこ
J17_0690B30: と眞佛の如くす。或時しばらく睡眠する内に上人を
J17_0690B31: 夢に拜せり。その粧ひ宛も佛身のごとし。綠の髮う
J17_0690B32: るはしく。冠にいただく玉の色。身に垂たる瓔珞の
J17_0690B33: 莊。白毫光明らけく。身體紫金色にして。白衣を着
J17_0690B34: し邊身の光明普く四邊を照し給ふ。右の御手の内よ

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