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J2540 弾誓上人絵詞伝 宅亮 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0689A01: 明を放ちて去り給へり。
J17_0689A02: ○又或時上人瀑の水にうたれてをはしましけるに。
J17_0689A03: 伊勢熊野八幡住吉春日の五社の神。形をあらはし出
J17_0689A04: 給ひ。汝に神道の祕奧を授くべし。去ながら凡骨に
J17_0689A05: ては成がたし。今換骨の法をなさんとて。春日は右
J17_0689A06: に寄給へば。住吉左に近づき。熊野は前に立給へ
J17_0689A07: り。八幡宮は利劒を提けて上人の背筋を截割凡血を
J17_0689A08: 出し給ふ。天照太神は神水を汲て頂上に洒ぎ給へ
J17_0689A09: ば。痛も疵も更になく。心眼開けて恰も睡夢の覺た
J17_0689A10: るが如し。此とき五社の神。異口同音に神道の奧義
J17_0689A11: を授け給ふ。是より以來見聞の事皆悉く憶持して忘
J17_0689A12: ず。識思明了なる事に成りぬ。此時八幡の手に取給
J17_0689A13: ふ寶劒は今現に當山にあり。
J17_0689A14: ○慶長二年十月十五日の夜。一夜淸朗にして巖窟
J17_0689A15: 特に寂寞たれば。心もいとど澄わたりて念佛もつと
J17_0689A16: も勇猛なり。そのとき忽然として此巖窟變じて報土
J17_0689A17: と成れり。敎主彌陀如來。大身を現じて微妙の法を
J17_0689B18: 説給ふ。大日如來釋迦如來最勝蓮華如來及び一切諸
J17_0689B19: 菩薩衆。星のごとく列りて虚空界に充滿せり。時に
J17_0689B20: 彌陀尊。直に上人に授記して。十方西淸王法國光明
J17_0689B21: 滿正彈誓阿彌陀佛と呼たまふ。其説法を書記して彈
J17_0689B22: 誓經と名く。都て六卷。今現に當山にあり梶井宮盛
J17_0689B23: 胤法親王の御筆なり。寔に上人は彌陀直授の眞子に
J17_0689B24: して。三昧發得の導師なり凡情の測る所にあらず唯
J17_0689B25: 仰ひで信ずべし。説法既に終る時。觀音大士手づか
J17_0689B26: ら白蓮所乘の佛頭をもつて上人に授け給ふ。是傳法
J17_0689B27: の印璽なり。本師如來は前三重後三重等の祕訣を授
J17_0689B28: けたまへり。上來の事畢りて後。報土の相沒し去。
J17_0689B29: 元の巖洞と成りて松風寂寂たり。その白蓮所乘の御
J17_0689B30: 頭は今儼然として當山に鎭在す。あるひは證據の御
J17_0689B31: 頭ともいひ。又は傳法の佛面ともいふ。
J17_0689B32: ○上人の躰たらく。身に白衣を着て眉間に白毫あ
J17_0689B33: り。亂髮下り垂て甚だ異相なり。檀特山に住て樵夫
J17_0689B34: 來れば逢ものごとに十念を授けて利益せんとし給ふ

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