浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J17_0687A01: | と皮とばかりにて口より火焰を吹出せるさま恐るべ |
J17_0687A02: | し。上人則ち敎化して至心に念佛し回向し給へは。 |
J17_0687A03: | たちまち消て跡方なし。其後永く妖怪は絶にけり。 |
J17_0687A04: | ○それよりして花洛に登り。五條の橋の上にて彼方 |
J17_0687A05: | 此方をながめやり給ふに。北にあたりて紫雲たなび |
J17_0687A06: | きほのかに佛影あらはれぬ。さては靈地なりけりと |
J17_0687A07: | おぼしてわけ入給ふに。果して幽邃勝絶なる佳境な |
J17_0687A08: | りき。即ち今の古知谷是なり。 |
J17_0687A09: | ○花洛を出て西を指し何くともなく行きて。攝州一 |
J17_0687A10: | の谷の古戰塲に至り壽永のいにしへ源平の亂れに結 |
J17_0687A11: | ぶ妄執をあはれみ。終夜念佛して所有精靈成三菩提 |
J17_0687A12: | と回向し給へば。更闌に及びて忠度道盛敦盛の三鬼 |
J17_0687A13: | 目近く顯れ出。上人に向いていふやう。修羅の炎止 |
J17_0687A14: | 期なく今まで苦趣にありし身の。かしこくも今夜の |
J17_0687A15: | 手向に預り。唯今善趣に至るとて。歡喜踊躍の相を |
J17_0687A16: | 成し。合掌叉手して消去りぬ。 |
J17_0687A17: | ○上人それより海邊に出。漫漫たる海上を打ながめ |
J17_0687B18: | て。終に我ゆくべき方と西方を望み。しきりに念佛 |
J17_0687B19: | し給へば。彌陀如來忽ち來現し。御手を垂て大寶蓮 |
J17_0687B20: | 花一本を給はり。此上にのぼりて我を拜せよと告給 |
J17_0687B21: | ふ。時にいかにして登りたるとも覺えずして。かの |
J17_0687B22: | 蓮花の上に登り。尊容を拜し給へり。 |
J17_0687B23: | ○紀州熊野三社は靈驗無双なる中にも。本宮證誠殿 |
J17_0687B24: | は本地彌陀如來なりと傳へ聞給ひ。特に懷しく覺へ |
J17_0687B25: | て。彼に至り終夜稱名を修し心を澄しておはしける |
J17_0687B26: | に順禮し畢れる女人有。ただちに寶前に進み來り |
J17_0687B27: | て。八葉の鏡を權現に捧げ奉り。一大圓鏡曇なく。 |
J17_0687B28: | 智惠の光明かに照させ給へと申て伏拜み。歸り去と |
J17_0687B29: | ひとしく。權現は僧形にあらはれ出。上人に告給は |
J17_0687B30: | く。汝濟度の悲願あり。よつて此鏡を與ふるなり。 |
J17_0687B31: | 衆生の善惡を照し見て利益をなせと示し給へり。此 |
J17_0687B32: | 鏡今現に當山に有。錦の袋に入たり。其袋には佛像 |
J17_0687B33: | を織付たり。右の順禮とみへし女人は。相傳ふ那智 |
J17_0687B34: | 山の如意輪觀音なりと。 |