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J2540 弾誓上人絵詞伝 宅亮 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0686A01: 當山居住の時初夜勤行の式とし給ふ今に至りて其式
J17_0686A02: を改むる事なし。世に大原念佛と名づけ。又は三字
J17_0686A03: 念佛とも號す。
J17_0686A04: ○七歳の時たまたま井のもとに立寄。はからずも落
J17_0686A05: 入りて母をよび給ひけるに。かたじけなくも彌陀如
J17_0686A06: 來忽ち來現し給ひて大慈大悲の御手より攝取不捨の
J17_0686A07: 綱をたれ小兒を引擧給ひけり。
J17_0686A08: ○九歳の春人の勸めによらずして自然に發心し。母
J17_0686A09: 上に對して出家學道の志をのべられたりけるに。母
J17_0686A10: 堂しばらくこしらへての給ふやうは。ありがたき志
J17_0686A11: なれどもいまだ二葉の齡なれば今少し待給へ。いか
J17_0686A12: 樣折もありなんと慰め給ふ。彌釋丸。再三會者定離
J17_0686A13: の理を述て歎かれけるにより。道理にふせられて遂
J17_0686A14: に承諾せられけり是に因て手づから髻をきりて名を
J17_0686A15: 禪誓と改め給ひぬ。
J17_0686A16: ○其後美濃の國塚尾の觀音堂に參籠し。一百日を期
J17_0686A17: して無上道心を祈願せらる。時に本尊比丘形を現し
J17_0686B18: 來りて。發心の程を感じ上人を禮拜し。念佛の一行
J17_0686B19: 高く諸行に勝るる旨を開示し給へり。
J17_0686B20: ○是より同國武儀郡の山奧に柴の庵を結び。一心不
J17_0686B21: 亂に稱名を修行せらる。光陰速に移りゆきて程なく
J17_0686B22: 二十餘回の春秋をわたる。髮鬚を剃るに遑あらざれ
J17_0686B23: ば居だけに生まさり宛も仙人のごとし。其内心の所
J17_0686B24: 證いかならんと感歎するに堪たり。
J17_0686B25: ○時に漸く利生のおもひを起し。草庵を立出て近江
J17_0686B26: の國にゆき森山の驛にいたる。里人つげていはく八
J17_0686B27: 洲の渡の橋のほとりに變化の者出步き夜夜人を惱せ
J17_0686B28: り。日もすでに山の端にかたぶきぬ。かならず行給
J17_0686B29: ふなかれと誡めたり上人これを聞給ひ。いかなるも
J17_0686B30: のならんゆきて敎化せばやとおもひ。かの橋の上に
J17_0686B31: 坐して念佛し給ふに。深更におよびて女の靈鬼あら
J17_0686B32: はれ出。上人に告るやう。われ在生の時慳貪なりし報
J17_0686B33: ひにて餓鬼道に落たりあはれ上人大慈悲をたれて苦
J17_0686B34: 患を救ひ給はれかしと泣泣かたり聞へたり。身は骨

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