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J2540 弾誓上人絵詞伝 宅亮 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0685A01: 彈誓上人繪詞傳卷上
J17_0685A02:
J17_0685A03: 開山彈誓上人は父なし。母は靑山氏尾張の國海邊里
J17_0685A04: の人なり。容色才智殊に勝れしかば父母の鐘愛大方
J17_0685A05: ならず。空しく鄙の栖に置なんことも本意なく思ひ
J17_0685A06: て。花の都に送り。かけまくも可畏君の御側につか
J17_0685A07: ふまつる身とぞなしける。花にめで月に嘯きてあま
J17_0685A08: たの春秋をかさねたり。しかはあれど宿善の内に催
J17_0685A09: しけるにや。つくづくと世の無常轉變の有さまを思
J17_0685A10: ひつづけ。住なれし玉の臺を出てもとの海邊に立か
J17_0685A11: へり。柴の庵を結びて一向後世の勤より外は他事な
J17_0685A12: かりき。或時二月十五日の夜夢みらく彌陀の三尊ま
J17_0685A13: のあたり來臨し短册を給はりける。仰ぎて能能見れ
J17_0685A14: は六字の名號なり。汝是を呑べしと告させ給ふゆへ
J17_0685A15: に。そのまま呑しと見て夢は覺たり。是よりして唯
J17_0685A16: ならぬ身と成りぬ。月に添てありがたく末たのもし
J17_0685A17: くぞ覺へられける。
J17_0685B18: 宮庭を出られし時の口ずさみに
J17_0685B19: 世の中をあきのゆふべの夢にふして
J17_0685B20: けふあつつきのかねにおどろく
J17_0685B21: ○後奈良院の御宇天文廿一年四月十五日の夜。又彌
J17_0685B22: 陀如來夢中に現じ蓮花一本を授げ給ひ。此花のうへ
J17_0685B23: に坐して快よく出産し。其子の字を彌釋丸と呼べし
J17_0685B24: と告給ふ。やがてなやむ事なく男子を生む。額に白
J17_0685B25: 毫相あり。時にあたりて紫雲天にそびへ。白幡二つ
J17_0685B26: とび來りて文彩日にかかやく。見聞の輩。奇異の念
J17_0685B27: ひをなさずといふことなし。夢の告に任せて小兒の
J17_0685B28: 名を彌釋丸といふ。二月十五は釋尊遷神の日なり。
J17_0685B29: その夜六字の名號を呑しかば。是遣迎二尊の使なる
J17_0685B30: べし。字のもとづく所ここにあり。
J17_0685B31: ○此子四歳の時彌陀の三尊化して三の童子とあらは
J17_0685B32: れ來りて。阿彌陀の三字を口ずさみ。小兒をなぐさ
J17_0685B33: め給ひけり。小兒是より怠らすつねに阿彌陀阿彌陀と
J17_0685B34: となへける上人一生是をわするることあたはす後に

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