浄土宗全書を検索する
AND検索:複数の検索語をスペースで区切って入力すると、前後2行中にそれらを全て含む箇所を検索します。
巻_頁段行 | 本文 |
---|---|
J17_0685A01: | 彈誓上人繪詞傳卷上 |
J17_0685A02: | |
J17_0685A03: | 開山彈誓上人は父なし。母は靑山氏尾張の國海邊里 |
J17_0685A04: | の人なり。容色才智殊に勝れしかば父母の鐘愛大方 |
J17_0685A05: | ならず。空しく鄙の栖に置なんことも本意なく思ひ |
J17_0685A06: | て。花の都に送り。かけまくも可畏君の御側につか |
J17_0685A07: | ふまつる身とぞなしける。花にめで月に嘯きてあま |
J17_0685A08: | たの春秋をかさねたり。しかはあれど宿善の内に催 |
J17_0685A09: | しけるにや。つくづくと世の無常轉變の有さまを思 |
J17_0685A10: | ひつづけ。住なれし玉の臺を出てもとの海邊に立か |
J17_0685A11: | へり。柴の庵を結びて一向後世の勤より外は他事な |
J17_0685A12: | かりき。或時二月十五日の夜夢みらく彌陀の三尊ま |
J17_0685A13: | のあたり來臨し短册を給はりける。仰ぎて能能見れ |
J17_0685A14: | は六字の名號なり。汝是を呑べしと告させ給ふゆへ |
J17_0685A15: | に。そのまま呑しと見て夢は覺たり。是よりして唯 |
J17_0685A16: | ならぬ身と成りぬ。月に添てありがたく末たのもし |
J17_0685A17: | くぞ覺へられける。 |
J17_0685B18: | 宮庭を出られし時の口ずさみに |
J17_0685B19: | 世の中をあきのゆふべの夢にふして |
J17_0685B20: | けふあつつきのかねにおどろく |
J17_0685B21: | ○後奈良院の御宇天文廿一年四月十五日の夜。又彌 |
J17_0685B22: | 陀如來夢中に現じ蓮花一本を授げ給ひ。此花のうへ |
J17_0685B23: | に坐して快よく出産し。其子の字を彌釋丸と呼べし |
J17_0685B24: | と告給ふ。やがてなやむ事なく男子を生む。額に白 |
J17_0685B25: | 毫相あり。時にあたりて紫雲天にそびへ。白幡二つ |
J17_0685B26: | とび來りて文彩日にかかやく。見聞の輩。奇異の念 |
J17_0685B27: | ひをなさずといふことなし。夢の告に任せて小兒の |
J17_0685B28: | 名を彌釋丸といふ。二月十五は釋尊遷神の日なり。 |
J17_0685B29: | その夜六字の名號を呑しかば。是遣迎二尊の使なる |
J17_0685B30: | べし。字のもとづく所ここにあり。 |
J17_0685B31: | ○此子四歳の時彌陀の三尊化して三の童子とあらは |
J17_0685B32: | れ來りて。阿彌陀の三字を口ずさみ。小兒をなぐさ |
J17_0685B33: | め給ひけり。小兒是より怠らすつねに阿彌陀阿彌陀と |
J17_0685B34: | となへける上人一生是をわするることあたはす後に |