浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J17_0638A01: | らね發心起行するもの其數をしらす黑瀨夫婦は上人 |
J17_0638A02: | を師として受戒染衣の身と成夫を專稱道圓妻を南無 |
J17_0638A03: | 永念と法號を給はりけれは歸投の心いよいよふかく |
J17_0638A04: | 歡喜の餘り家財を盡して道塲をとり建上人に奉らん |
J17_0638A05: | と專經營の事怠りなかりき。 |
J17_0638A06: | ○南無永念 南無ノ二字ハ佛菩薩ノ御名ニノミアリテ凡人ニハ世ニマレナル名ニシ侍レド南無ハ梵語ニテ歸命又ハ度我救我トモイヒ又ハ發願回向ノ義ナレハスクヒ玉ヘタスケ玉ヘノココロナラン惣ジテ唯其實體ヲヨヒ出スヲ名トイヒヌレバ強テ義ヲナスモノニアラス專稱道圓カ如キモ專ラ道圓ヲ稱ヘヨトイフニアラス道圓ハ專修稱名ノ行者ナレバ專稱ノ要行ヲ失卻セザレトナリ永念モ偏ニタスケ玉ヘト願生ノ行者ニシテ歸命シスクヒ給ヘトネガフ永念ナレバ南無永念ト呼ビ給フランアナガチニアヤシム事ニアラズ俊乘房重源ハ自ラ南無阿彌陀佛ト呼ビ玉ヒシヨリ多ク阿號ヲヨビヌルガ如シ又涅槃經ニ南無純陀ノ類例ナキニシモアラネバ佛菩薩ニカギリタルニモアラズ。 |
J17_0638A07: | 專稱庵草創の事 |
J17_0638A08: | 是によりて願主道圓もろともに勝地をえらみ精舍を |
J17_0638A09: | 造營せんとここかしこ遊覽し給ひけるに同郷の内に |
J17_0638A10: | 一の池ありもろこの池とよひけるときに上人もろこ |
J17_0638B11: | の池といひし故ありやと尋ね玉へは道圓答て申ける |
J17_0638B12: | は中古此處に獨の翁あり家はなはだまづしうして世 |
J17_0638B13: | をわたるへき便なく此池のもろこといふ魚をとり京 |
J17_0638B14: | にをくり市にひさぎて活命の資となしけるしかるに |
J17_0638B15: | いかなる因縁にや此翁常にかやうの業をいとなみけ |
J17_0638B16: | る中にも稱名間斷ある事なかりきされは餘人此魚を |
J17_0638B17: | とらんとするにひとつも得る事なく翁あみすれは千 |
J17_0638B18: | 度百度魚を得すといふ事なしかかる不思議の事侍れ |
J17_0638B19: | は見る人茂呂子の翁と申あへりとなん其魚なを今に |
J17_0638B20: | あり一覽なし玉へと上人諸ともに池の邊りに立や |
J17_0638B21: | すらひ是を見玉ふに寂然として魚はふかくしつみて |
J17_0638B22: | 見えす道圓及諸人に敎へて念佛せしめけれは奇哉妙 |
J17_0638B23: | 哉稱名の聲に應し幾許となく水面に浮出る傳へきく |
J17_0638B24: | むかし執獅子國の阿彌陀魚もかくやと思ひ合せり斯 |
J17_0638B25: | て上人池邊を東西し給へは步行に隨て魚も亦東西す |
J17_0638B26: | 南北も又しかなり彼流水長者の步行に隨ふ魚のことく |
J17_0638B27: | 見聞の緇素感嘆せすといふ事なし其後日を經て上人 |