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J2520 湖東三僧伝 信冏 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0618A01: 半腹に收めまゐらせぬ開山塔といへるこれなり。
J17_0618A02: 法印康存の日或年伊勢大神宮に參籠し念佛の弘通を
J17_0618A03: 祈り給へりしが七日にみつる曉の夢に神殿の御戸う
J17_0618A04: ちひらけ優なる御童子いでさせたまひこの彌陀佛を
J17_0618A05: 吾僧にまゐらすぞと仰らるるとおぼしてさめ給ふに
J17_0618A06: はたしてかの御ほとけまさしくあたりちかき石のう
J17_0618A07: へにたちたまひしかば悅びいはんかたなくやがて負
J17_0618A08: 奉り加太越にてこの國へこし給ふその道なる甲賀郡
J17_0618A09: 馬杉の庄瀧の稱名寺へいらせ給へるにかの御ほとけ
J17_0618A10: あたりまばゆきまでに光を放ちたまひて樹樹の梢も
J17_0618A11: あかく見へければ里人炎上ならんとおどろきさわぎ
J17_0618A12: しとなん稱名寺の舊記もこれと同じかの里に今なほこのことをいひ傳へり法印このしるし
J17_0618A13: にとて松を栽この松今にさかへて稱名寺の佛殿の西にありその大さおよそ三拱ばかりなり御ほとけ
J17_0618A14: を奉持し遂に此山に歸り給ひしかば群參の袖谷をう
J17_0618A15: づめ稱名の聲山をうごかし念佛の弘通日にまし盛な
J17_0618A16: りけるかくて天文十三年二月十五日又慶長九年七月
J17_0618A17: 十五日にもひかりを放ちたまひて利益きはやかにさ
J17_0618B18: まさまなりける當國栗太郡駒井澤村永田氏が家にかくせる佐佐木家のふるき日記の中にもこの天文慶長の瑞相
J17_0618B19: をのせ遠國の人もうきたちて群參せしと記したり即當山の天照佛といへるは是な
J17_0618B20: り又あるとし法印奈良の春日明神へ參籠し給へるに
J17_0618B21: 明神まのあたり世に希なる珠を授け給へり今に傳へ
J17_0618B22: て重鎭とせり。
J17_0618B23: 法印の法語にいはく當流のこころ安心を助給への二
J17_0618B24: 字にならひいれ起行を故の一字に習ひいれ用心を念
J17_0618B25: 死念佛と相承するなりいはく安心とは三心なり三心
J17_0618B26: の要は阿彌陀佛に歸命するなり歸命とはすなはち助
J17_0618B27: 給へなり助給へに三心はをのづからそなはれりゆゑ
J17_0618B28: に安心の肝要を助給への二字に習ひいるるなり起行
J17_0618B29: に五種あり其中稱名の一行ただこれ正定業なり順彼
J17_0618B30: 佛願故と説れたるゆゑに起行の至要を故の一字に習
J17_0618B31: ひいるるなりこの心行もし退轉せばすなはち死を念
J17_0618B32: すべし死を念ずればそらに助給へのこころ起りて念
J17_0618B33: 佛が申さるるなりゆゑに用心の至極を念死念佛と口
J17_0618B34: 傳するなりこれ當流出離の故實なり又淺は深なり秘

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