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J2500 向阿上人伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0599A01: るにて。彼述懷もむなしからす。悲願の深きもい
J17_0599A02: と貴くなん侍りぬ。予幸に幼年より家を出て蓮門
J17_0599A03: の衆に列るといへとも。其性痴鈍なれは。安心の
J17_0599A04: 徑路一方におもひ定めかたかりしに。壯年に至て
J17_0599A05: 引接室關通老師の講筵に詣て。此上人の感得し給
J17_0599A06: ひたる。三部の秘抄を聽聞して。吉水の流れはか
J17_0599A07: く社と汲得て。安心の一すちも澄渡りしやふに覺
J17_0599A08: へはへりぬ。しかありしより已來。華夷の處處に
J17_0599A09: おいて。時とき彼秘抄を講説して。有縁の道俗を
J17_0599A10: 勸誘すること三十年に過たり。其中にはからすも
J17_0599A11: 眞如堂諸衆の請に逢て。彼靈像前において。歸命
J17_0599A12: 本願抄を講する事三會。又此上人の遺跡池上西光
J17_0599A13: 庵に。予か弟子なるもの住持する事今已に二世に
J17_0599A14: 續り。不思議の縁といふへし。しかのみならす講
J17_0599A15: 筵に詣來て。日課稱名を誓受する人六萬にあまれ
J17_0599A16: り。喜へきの甚しきにあらすや。予つらつらこれ
J17_0599A17: をおもふに。解といひ行といひ。無下に愚に拙き
J17_0599B18: 身の自といひ他といひ。かく過分の大利を得たり
J17_0599B19: しは。偏に是此上人に有縁ありて。彼加被力のな
J17_0599B20: さしむるなるへし。實に一世ならぬ深恩。何を以
J17_0599B21: てか報するに堪んや。これによりて。年ころ上人
J17_0599B22: の事跡を尋るに。諸書に擧て散在すといへとも其
J17_0599B23: 文いつれも略にして。上人の始末窺ひ得難し。按
J17_0599B24: するにこれ上人の光をつつみ跡を晦して過たまひ
J17_0599B25: にし故なるへし。我輩においては遺る憾なきにし
J17_0599B26: もあらさりしに。西光庵の什寶の中に二卷の繪詞
J17_0599B27: 傳あり。何人の撰述とはしらされとも。繪は報恩
J17_0599B28: 古磵和尚。書は林觀雲竹法師の筆跡にて脩飾し轉
J17_0599B29: 寫し。廣澤の末葉孝源大僧正跋文を附置きたまへ
J17_0599B30: り。これ尚上人を盡せるにはあらされとも。餘書
J17_0599B31: に比すれはいとつまひらかなり。予此傳を得て喜
J17_0599B32: に堪す。あまねく世にひろうし。深恩の萬一を酬
J17_0599B33: んかため。梓にのほし西光庵に藏む。言を同志の
J17_0599B34: 輩に寄す。此傳に據て粗上人の事跡を知り。因人

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