ウィンドウを閉じる

J2420 法然上人伝絵詞 琳阿 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0247A01: とするに大海は中夭あるへししつかに池にすまむと
J17_0247A02: 思ひて遠江國かさはらの庄さくら池といふ所あり領
J17_0247A03: 家にかの池を申こひてちかひにまかせて死期の時水
J17_0247A04: をこひて掌に入てをはりにけり然に彼池風ふかすし
J17_0247A05: て俄に大浪たちて池の中のちりことことくはらひあ
J17_0247A06: く諸人是を見て則此よしをしるして領家にふれ申そ
J17_0247A07: の時日をかんかふるにかの阿闍梨逝去の日也智惠あ
J17_0247A08: るかゆへに生死のいてかたき事をしり道心あるか故
J17_0247A09: に佛の出世にあはん事をねかふ然といへとも今に淨
J17_0247A10: 土の法門をしらさるゆへにかくのことくの意樂に住
J17_0247A11: するなり我其時に此法門をたつねゑたらましかは信
J17_0247A12: 不信はしらす申侍なましその故は極樂往生の後は十
J17_0247A13: 方の國土心にまかせて經行し一切諸佛思ひにしたか
J17_0247A14: ひて供養す何そ強に穢土に久處する事をねかはむや
J17_0247A15: 彼阿闍梨は遙に慈尊三會の曉を期して五十六億七千
J17_0247A16: 萬歳の間此池に住給はむとて上人常に悲給き當時に
J17_0247A17: いたるまて靜なる夜は振鈴のをときこゆとそ申傳は
J17_0247B18: へる上人後に彼池に尋て御渡ありけるに虵うきいて
J17_0247B19: て物語ありけりと云云
J17_0247B20: 阿闍梨掌に水を入れて遷化 上人虵身の闍梨に對面の圖
J17_0247B21: 久安六年庚午九月十二日上人生年十八にして初て黑谷
J17_0247B22: の叡空上人の深窓にいたる時上人出でむかひて發心
J17_0247B23: の由來を問給ふに親父の夜うちのために世をはやう
J17_0247B24: せしよりその遺言にまかせて遁世のよし思たちたる
J17_0247B25: 次第つふさにかきくとき給けれはさては法然具足の
J17_0247B26: ひしりにこそおはすなれと侍しより法然といふ名を
J17_0247B27: はつき給けりいみ名は源空是すなはちはしめの師の
J17_0247B28: 源光の初の字と後の師叡空の後の字とをとられたる
J17_0247B29: 也夫黑谷の體たらく谷ふかくしてたかねきよしなか
J17_0247B30: れにくちすして人すみぬへし道ほそくしてあとかす
J17_0247B31: か也あとをくらくする輩なんそをらさらむしかのみ
J17_0247B32: ならす春の花夏の泉秋の月冬の雪四季の感興一處に
J17_0247B33: をのつから備へたり又甘菓ありかうはしき香ありう

ウィンドウを閉じる