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J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0239A01: 此中に一德備へたる人は餘事のたらざる事をうらむ
J17_0239A02: べし。其外百非をはなれたる輩。いかでか甲乙の舌
J17_0239A03: をのべんや。就中上人は王公卿臣の家よりも生ぜ
J17_0239A04: ず。茅屋茂林の下より出たりといへども。殿上にめ
J17_0239A05: されて猶高座にのぼる。公請學道の業にたづさはる
J17_0239A06: 事なけれども。明王に召れて歸敬せらる。是ひとへに
J17_0239A07: 慈覺大師の遺風。十重尸羅の戒香。ふかく法衣にそ
J17_0239A08: み。善導和尚の餘流。三昧發得の定力。遠く心緖を
J17_0239A09: つたへ給へるによりて。方に今三國の芳躅をとむら
J17_0239A10: ひ。吾朝の遺風をかんがふるに。神明佛陀の靈瑞よ
J17_0239A11: り。賢人才士の明德に至るまで。目に見ざる古聖の
J17_0239A12: 嚴顏を見。耳にきかざる異域の勝境を知る事。偏に是
J17_0239A13: 畫圖のあやつり。筆跡の功にあり。但晋朝七賢の形。
J17_0239A14: これをつたへてもいまだ其益あらず。穆王八駿の
J17_0239A15: 圖。これにむかひて又何にかせむ。或は狂言綺語の
J17_0239A16: 繪を見て心をうごかし。或は榮花重職の粧をひらき
J17_0239A17: て。目をおどろかす。更に出離の媒にあらず。併是
J17_0239B18: 癡愛の翫たり。然をいま九卷の繪を作して。九品の
J17_0239B19: 淨業にあて。一部の功力を終て。一宗の安心を全く
J17_0239B20: せんが爲に。諸傳の中より要をぬき肝をとりて。或
J17_0239B21: は紕謬をただし。或は潤色を加えて。後賢にをくり
J17_0239B22: て。ともに佛國を期せんと也。若祖師の德を擧る事。
J17_0239B23: 佛陀の誓にそむかずば。當時の弘通をさまたげず。
J17_0239B24: 將來の善根を悅ぶべし。或は信或は謗の輩。一見一
J17_0239B25: 聞の人。必ず彌陀の名號を唱べし。偏に其最後臨終
J17_0239B26: の引接のみにあらず。剩又現生護念の誓願ましま
J17_0239B27: す。佛使廿五菩薩。一切時來。常に護念。何の疑か
J17_0239B28: あらん。見聞一座の諸人。同音に千返の念佛を申さ
J17_0239B29: るべし。
J17_0239B30: 願以此功德。 平等施一切。
J17_0239B31: 同發菩提心。 往生安樂國。
J17_0239B32: 此傳一部九卷開爲十八冊合爲三册花頂山入信院藏寶義山上人所持ノ本
J17_0239B33: ヲ以テ寫之畢ヌ又西福寺惠空師元祿八年中阿上人ノ直本ヲ以テ寫
J17_0239B34: ス處ノ本ヲ以テ挍ス惠空師ノ考ニ此傳ハ嘉祿年中ノ記ト見ヘタリ
J17_0239B35: 其故ハ傳文釋迦堂ノ篇ニ見ヘタリ云云。

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