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J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0238A01: 計なりとて。偏に上人勸化の詞を信じて。稱名の行
J17_0238A02: おこたらず。病床に臥して後。或時俄に涕泣せらる
J17_0238A03: る事ありけるを。弟子驚て是をたづね申しければ。
J17_0238A04: 明禪。聖覺とて。つがひてひとにいはるなる。不足
J17_0238A05: 言の對揚かなと。年來思ひしが。唯今ぞと思いでら
J17_0238A06: れたるなり。故郷の妄執をわすれざるは。淨刹の欣
J17_0238A07: 求のひまあるにとぞ申されけるは。念念不捨者の信
J17_0238A08: 力も。此理に顯はれ。順彼佛願故の正業も。ただ一
J17_0238A09: 言に知られたり。臨終の時は。聖信上人を知識とせ
J17_0238A10: られけり。紫雲たなびきて往生人の相ありとて。人
J17_0238A11: 多く羣集するよし。弟子ども申ければ。何條明禪が
J17_0238A12: 臨終に紫雲のさたまでに及ばんぞ。ただ正念亂ずし
J17_0238A13: て。稱名をもちて息たえたらんに過べからずとて。
J17_0238A14: 頭北西面右脇臥にして。極重惡人。無他方便。唯稱
J17_0238A15: 彌陀。得生極樂の文を唱へ。念佛相續し。如入禪
J17_0238A16: 定して。仁治三月正月二日午尅に往生を遂られき。
J17_0238A17: 上人德行惣結事
J17_0238B18: 凡智惠深奧の諸宗の賢哲。多く上の勸化に隨て。本
J17_0238B19: 宗をさし置て念佛に歸して。往生を遂る人人。上人
J17_0238B20: 在世といひ。かの滅後といひ。覶縷にいとまあらず。
J17_0238B21: 高貴の智德なをしかり。况や我等ごときの愚鈍。な
J17_0238B22: にをたのみてか。念佛をゆるかせにすべきや。懈怠
J17_0238B23: にして念佛を行ぜず。不信にして往生を遂ざらむ
J17_0238B24: は。あに佛のとがならんや。抑上人の德行。諸宗を
J17_0238B25: 訪へば師毎に嗟嘆し。化導を施せば人毎に歸敬す。
J17_0238B26: たれの人か闇夜に灯なくして室の内外を照すや。誰
J17_0238B27: の人か現身に光明放や。是念佛三昧の故なり。誰の
J17_0238B28: 人か慈覺大師の袈裟を相傳するや。南岳大師相承云云誰の人か
J17_0238B29: 太上天皇に眞影をうつされ奉るや。誰の人か韋提希
J17_0238B30: 夫人と念佛の義を談ずるや。誰の人か諸宮諸院に歸
J17_0238B31: 敬せられ給ふや。誰の人か攝政殿に禮拜せられたる
J17_0238B32: や。誰の人か智惠第一の名を得たるや。誰の人か沒
J17_0238B33: 後に花夷男女。家毎に遠忌。月忌。臨時の孝養をい
J17_0238B34: たすや。誰の人か人毎に影像を留て本尊とするや。

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