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J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0237A01: ける時。緇素貴賤。今日をはれとのみ思あへり。夢
J17_0237A02: 幻泡影。片時のさかえをわすれざるものひとりもあ
J17_0237A03: らず。俗家には。大將の庭の景氣。大裏の門外のふ
J17_0237A04: るまひ。僧中には。證義者は上童を具して別座をま
J17_0237A05: うけ。攝籙の息は隨身をしたがへて直廬に參らせら
J17_0237A06: る。かれこれ榮耀を見て。見聞の輩。はしりまはれ
J17_0237A07: るありさま。つくづくとおもへば無常忽に至りな
J17_0237A08: ば。餘算いつまでをか期すべき。無上菩提を見るに
J17_0237A09: 付ては。胸中の觀念すみまさるままに。籠居の思ひ
J17_0237A10: この時治定せられけり。彼須菩提尊者は。石室の中
J17_0237A11: に入定して。定中に佛の一夏九旬説法の後。忉利
J17_0237A12: 天上より來下し給ひしを見奉て。今日の集會甚未曾
J17_0237A13: 有也。座中に佛及轉輪聖王。諸天龍神おほくあつま
J17_0237A14: れり。然といへどもみないきほひ久しく留るべから
J17_0237A15: ず。磨滅の法也。ことごとく無常に歸しなんと。此
J17_0237A16: 無常觀を初門として。諸法の畢竟じて皆空成事を悟
J17_0237A17: て。尊者たへに道證を得給へりき。今此法印の發心
J17_0237B18: の義。すこしも解空第一の羅漢にはぢずぞ侍ける。
J17_0237B19: 扨隱遁の志は思定ぬ。出離の道いまだ一決せず。と
J17_0237B20: かく思惟せられしに。持たる數珠我も思わくかたな
J17_0237B21: くて。自然の手ずさみにくられける時。有縁の法。
J17_0237B22: 易行の道。稱名にあるべきにこそと。その座にておも
J17_0237B23: ひそめられて。終に籠居せられにき。或時信空上人
J17_0237B24: に謁して。念佛の物語有けるに。聞ざるには信も謗
J17_0237B25: もともに謬あり。これを見て若は信じ若は謗ずべし
J17_0237B26: とて。上人所造の選擇集を送れる間。彼書を披見し
J17_0237B27: て後。淨土の宗義を得。稱名の功德をしる。其より
J17_0237B28: 已來つねの諺は。顯密をたしなみて。佛の惠命をつ
J17_0237B29: ぎ。公請にしたがひて。國の安全を祈るとも。傍に
J17_0237B30: は淨土の敎行を學して。ひそかに樂邦の往詣をとげ
J17_0237B31: む事尤至要なり。公家の請をものぞまず。官途の計
J17_0237B32: ことにもあてがはず。心あらん人誰か稱名を妨げ
J17_0237B33: ん。懈怠にして既に過去遠遠を歷たり。不信ならば
J17_0237B34: 定て未來永永を送らん歟。今はただ畢命を期とせん

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