浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J17_0237A01: | ける時。緇素貴賤。今日をはれとのみ思あへり。夢 |
J17_0237A02: | 幻泡影。片時のさかえをわすれざるものひとりもあ |
J17_0237A03: | らず。俗家には。大將の庭の景氣。大裏の門外のふ |
J17_0237A04: | るまひ。僧中には。證義者は上童を具して別座をま |
J17_0237A05: | うけ。攝籙の息は隨身をしたがへて直廬に參らせら |
J17_0237A06: | る。かれこれ榮耀を見て。見聞の輩。はしりまはれ |
J17_0237A07: | るありさま。つくづくとおもへば無常忽に至りな |
J17_0237A08: | ば。餘算いつまでをか期すべき。無上菩提を見るに |
J17_0237A09: | 付ては。胸中の觀念すみまさるままに。籠居の思ひ |
J17_0237A10: | この時治定せられけり。彼須菩提尊者は。石室の中 |
J17_0237A11: | に入定して。定中に佛の一夏九旬説法の後。忉利 |
J17_0237A12: | 天上より來下し給ひしを見奉て。今日の集會甚未曾 |
J17_0237A13: | 有也。座中に佛及轉輪聖王。諸天龍神おほくあつま |
J17_0237A14: | れり。然といへどもみないきほひ久しく留るべから |
J17_0237A15: | ず。磨滅の法也。ことごとく無常に歸しなんと。此 |
J17_0237A16: | 無常觀を初門として。諸法の畢竟じて皆空成事を悟 |
J17_0237A17: | て。尊者たへに道證を得給へりき。今此法印の發心 |
J17_0237B18: | の義。すこしも解空第一の羅漢にはぢずぞ侍ける。 |
J17_0237B19: | 扨隱遁の志は思定ぬ。出離の道いまだ一決せず。と |
J17_0237B20: | かく思惟せられしに。持たる數珠我も思わくかたな |
J17_0237B21: | くて。自然の手ずさみにくられける時。有縁の法。 |
J17_0237B22: | 易行の道。稱名にあるべきにこそと。その座にておも |
J17_0237B23: | ひそめられて。終に籠居せられにき。或時信空上人 |
J17_0237B24: | に謁して。念佛の物語有けるに。聞ざるには信も謗 |
J17_0237B25: | もともに謬あり。これを見て若は信じ若は謗ずべし |
J17_0237B26: | とて。上人所造の選擇集を送れる間。彼書を披見し |
J17_0237B27: | て後。淨土の宗義を得。稱名の功德をしる。其より |
J17_0237B28: | 已來つねの諺は。顯密をたしなみて。佛の惠命をつ |
J17_0237B29: | ぎ。公請にしたがひて。國の安全を祈るとも。傍に |
J17_0237B30: | は淨土の敎行を學して。ひそかに樂邦の往詣をとげ |
J17_0237B31: | む事尤至要なり。公家の請をものぞまず。官途の計 |
J17_0237B32: | ことにもあてがはず。心あらん人誰か稱名を妨げ |
J17_0237B33: | ん。懈怠にして既に過去遠遠を歷たり。不信ならば |
J17_0237B34: | 定て未來永永を送らん歟。今はただ畢命を期とせん |