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J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0236A01: 道初めて上人へ參りける時。もし命をもすてて。後
J17_0236A02: 生たすかれとならば。頓て腹をきらん爲の用意に持
J17_0236A03: たりける刀をば。念佛して往生すべきよしを承定ぬ
J17_0236A04: る上はとて。上人にまいらせけるを。上人より津戸
J17_0236A05: 入道に給て祕藏しける。今自害の時は。件の刀を用
J17_0236A06: けるにや。在家の弟子も其數ありし中に。自害往生
J17_0236A07: の素懷を遂べき器と。御覽られけると子細なきにあ
J17_0236A08: らねども。腹を切て後七日は。うがひを用けれども。
J17_0236A09: 其後は塗香ばかりにて。水を口にはよせざりける
J17_0236A10: に。五十七日の間。氣力もよはらず。聊の痛もなく。
J17_0236A11: おもひのごとく念佛相續して。仁治四年二月廿七日改元寬元元年也
J17_0236A12: 正月十五日午の尅八十一にして。耳目を驚かすほど
J17_0236A13: の往生を遂ぬる事は。あくまで護念增上縁の益にあ
J17_0236A14: づかりける事も眼前なれば。いよいよ希代のふしぎ
J17_0236A15: なりとぞ申あひける。
J17_0236A16: 明惠上人託事
J17_0236A17: 栂尾の明惠上人。さきに摧邪輪を造て選擇集を破
J17_0236B18: し。後に莊嚴記を製し。重ねてこれを破す。しかる
J17_0236B19: を逝去の後。ある月卿の邊に侍る小女に託して云。
J17_0236B20: 我は是明惠房高辨也。さらに惡心をもて來らず。聊
J17_0236B21: 示すべき事有。我日來法然上人を破する故に生死を
J17_0236B22: いでず。剩へ魔道に墮せり。この事を懺悔せんが爲
J17_0236B23: に來れり。若不審を殘さば。是をもて知べしといひ
J17_0236B24: て。紙十枚計を續て。華嚴の十玄六相。法界圓融の
J17_0236B25: 甚深の法門をかく事滯りなし。法門といひ。手跡と
J17_0236B26: いひ。皆是彼上人の平生の所作也。又小女の聲全く
J17_0236B27: かの上人の音聲に。違せずして早く摧邪輪を燒べし
J17_0236B28: とのたまへり。嚴重の奇特。殆言語のおよぶ所に
J17_0236B29: あらず。
J17_0236B30: 明禪法印往生事
J17_0236B31: 毘沙門堂法印明禪は。參議成賴卿の息。顯宗は檀那
J17_0236B32: の嫡流智海法印の面受。密宗は法曼院の嫡流仙雲法
J17_0236B33: 印の弟子として。顯密の棟梁。山門の宗匠なりき。然
J17_0236B34: るに初發心の因縁は。最勝講の聽衆に參ぜられたり

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