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J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0235A01: 也。よりて見よと申ける時ぞ。始めて人知にける。
J17_0235A02: 心さきのほどに圓き物の有よし申ければ。手を入て
J17_0235A03: 引切てなげすてて。是が殘たるゆへに臨終のぶるな
J17_0235A04: るべしとぞ申ける。人人あつまりて驚申ければ。娑
J17_0235A05: 婆界のいとはしく。極樂界のねがはしき志。日にし
J17_0235A06: たがひて。いやまさりければ。今一日もとくまいり
J17_0235A07: たきゆへに。かくはからひたる次第を。かきくどき
J17_0235A08: 申ければ。誠に願往生の志の熾盛なるありさま。見
J17_0235A09: る人皆涙をながさぬはなし。少きの痛もなくて念佛
J17_0235A10: しけるが。七日まで延ける間。うがひの人の通はす
J17_0235A11: なるべしとて。七日以後はうがひをとめて。塗香を
J17_0235A12: 用けるが。氣力も更によはらず。ほどなく疵いゑに
J17_0235A13: けり。後には時時行水を用けるとかや。正月一日に
J17_0235A14: もなりければ。死せずしては往生すべき道なき間。
J17_0235A15: 尊願は正月一日の祝には。臨終の儀式をなして。年
J17_0235A16: 久しくなれり。日來のあらましたがはずして。今日
J17_0235A17: 往生すべきゆへに。延引しけりと悅で。しきりに念
J17_0235B18: 佛しけれども。其日も過。次の日もまたくれぬ。唯
J17_0235B19: 今臨終すべき心地もなかりければ。此世の事を申契
J17_0235B20: りたるだにも。眞有人は變ぜず。たかへぬは世のな
J17_0235B21: らひ也。まして上人ほどの人の往生の後は。かなら
J17_0235B22: ずおもひ出べき也。極樂に參りてあへと自筆の御文
J17_0235B23: たびながら。いそぎ參らんと心を盡し侍に。速く迎
J17_0235B24: へさせ給ふ事こそ。心うく侍れと。かきくどきて連
J17_0235B25: 日に歎申けるが。同十三日の夢に。來十五日午尅に
J17_0235B26: 迎べきよし。上人告給ひければ。十四日に此夢を語
J17_0235B27: て。歡喜の涙をながし。彌念佛にいさみをなしてけ
J17_0235B28: るが。十五日になりければ。上人より給ける袈裟
J17_0235B29: をかけ。念珠をもちて。西にむかひ端坐合掌して。
J17_0235B30: 高聲念佛數返を唱へ。午の正中に念佛と共に息たへ
J17_0235B31: ぬ。紫雲空より顯れ。異香室にみつ。荼毘の庭に至
J17_0235B32: るまで。異香なを失せず。奇特其數おほしといへど
J17_0235B33: も。しげきによりてのせず。世擧て謳歌の間。將軍
J17_0235B34: 家より御尋に預りしかば。悉く記し申ける。熊谷入

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