浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J17_0234A01: | 御影をおがめと云ふ事を不審する條謂なしと。あし |
J17_0234A02: | き御氣色なりけるに。さはぎて驚たれば。善導の御 |
J17_0234A03: | 影に向ひ參らせたる事。夢の中に上人に物語申つる |
J17_0234A04: | に。少もたがはざりければ。上人はただ人にては御 |
J17_0234A05: | 坐ざりけりと。いよいよ信心ふかくして。往生の後 |
J17_0234A06: | はかならずおもひ出べきよしをのせられ。また極樂 |
J17_0234A07: | にまいりあへとのせられたる。御自筆の御文共をば |
J17_0234A08: | 錦の袋に入て。身をはなたずして念佛しけるが。誠 |
J17_0234A09: | に時いたりけるにや。建保七年正月に。右大臣家薨 |
J17_0234A10: | 逝の時。御免を蒙て出家の本意を遂にければ。上人 |
J17_0234A11: | よりしるし給ける法名を付て尊願とぞ申ける。上人 |
J17_0234A12: | 御往生の後は日に隨て極樂の戀しく。年を逐て穢土 |
J17_0234A13: | のいとはしく覺へける儘に。常に此文を取出して拜 |
J17_0234A14: | 見しては。とく迎へさせ給へと申けれども。むなし |
J17_0234A15: | く年月を送りける。上人の門弟已下の僧衆を屈し |
J17_0234A16: | て。仁治三年十月廿八日に。三七日の如法念佛をは |
J17_0234A17: | じめ。十一月十八日結願の夜半。道場のあかり障子 |
J17_0234B18: | の内にして。高聲念佛數百遍の後。忍びて腹を切て。 |
J17_0234B19: | あらゆるほどの物をば悉く取出して。練大口に裹 |
J17_0234B20: | で。おさなき者をよびて。後の川に捨させにけり。 |
J17_0234B21: | 夜陰の事なれば人更に是を知らず。其後僧衆に向 |
J17_0234B22: | て。かやうに出家籠居して。大臣殿の御菩提を訪奉 |
J17_0234B23: | るに付ても。主君の御餘波も戀しく御坐すうへ。上 |
J17_0234B24: | 人の極樂にかならず參合へと仰の有しに。今まで |
J17_0234B25: | 不往生して尊願が長命かたがた無益の事なり。釋 |
J17_0234B26: | 尊も八十の御入滅。上人も八十の御往生。尊願又滿 |
J17_0234B27: | 八十也。第十八は念佛往生の願也。今日又十八日也。 |
J17_0234B28: | 如法念佛の結願に當て。今日往生したらんは殊勝の |
J17_0234B29: | 事なるべしなど申ければ。かかる用意とは思もよら |
J17_0234B30: | ず。只あらましの詞と心得て。誠に目出こそ候はめ |
J17_0234B31: | と返答しけるに。その夜もあけ。十九日になりぬ。 |
J17_0234B32: | 敢て苦痛なし。只今臨終すべき心地もせざりけれ |
J17_0234B33: | ば。子息民部大夫守朝をよびて。きりたる腹を引あ |
J17_0234B34: | けて。まろきもと云ものの殘て。臨終の延ると覺る |