ウィンドウを閉じる

J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0229A01: けるが。其夜の亥尅に及で高聲念佛四百餘返。體を
J17_0229A02: せめつつ。念佛のいきにておはり給ひにけり。在俗
J17_0229A03: の身たりながら。嚴重殊勝の往生を遂られし事。し
J17_0229A04: かしながらこれ律師の一言によるゆへ也。律師は飯
J17_0229A05: 山へ下給ひし後は。森入道の尊崇いよいよふかく。
J17_0229A06: 歸敬他事なかりしほどに。同年仲冬より風痾におか
J17_0229A07: され。老病臥給ひしかば。病床にふでをとりて。一
J17_0229A08: 期の身の事を記し給へり。これを〓中吟となづく。
J17_0229A09: 其中に曰。我きく。達摩和尚は配所の叢に跡をのこ
J17_0229A10: し。慈恩大師は壞土のいほりに名をとどむ。ひとり
J17_0229A11: は佛心宗の根源。ひとりは法相宗の高祖也。大國な
J17_0229A12: をしかり。況や邊州をや。上古又如此。況末代を
J17_0229A13: や。苦海安からず浮生夢のごとし。唯聖衆の來迎を
J17_0229A14: のぞむ。更に有爲の遷變をいたまずとて。極樂を賦
J17_0229A15: する詩。光明を詠ずる歌をかかれ。
J17_0229A16: 佛意定知智願明。 故關夜月待雲迎。
J17_0229A17: 舞姿如鳥去留易。 樂韻任風遠近鳴。
J17_0229B18: 界道林池交友思。 樓臺宮殿禮尊情。
J17_0229B19: 238
J17_0229B20: み名をよふこゑすむやとに見る月は
J17_0229B21: 雲も霞もさえはこそあらめ
J17_0229B22: 日にしたがひて次第によはり給けるが。同十二月十
J17_0229B23: 三日廿日改元安貞元申時に至て律師のたまひけるは。往生の
J17_0229B24: 時既にいたれり。予が義の邪正をも。一向專修の往
J17_0229B25: 生の手本をも。只今あらはすべき也とぞ。彌陀の三
J17_0229B26: 尊にむかひ。五色の糸を手にかけ。端坐合掌して彌
J17_0229B27: 陀身色如金山。相好光明照十方。唯有念佛蒙光攝。
J17_0229B28: 當知本願最爲強の文を唱給ければ。傍に侍る正智唯
J17_0229B29: 願房も同じく是を唱て。臨終の一念は百年の業にも
J17_0229B30: 勝たりと申ければ。すこしゑめる氣色にて本尊を瞻
J17_0229B31: 仰し。高聲に念佛して禪定に入がごとくして。をは
J17_0229B32: り給にけり。春秋滿八十なり。彩雲軒に近づき。異
J17_0229B33: 香室にみてり。遠近の緇素市をなし。いよいよ念佛
J17_0229B34: の信心をましけり。其後實成房なくなく奧州より飯

ウィンドウを閉じる