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J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0228A01: 國飯山へ具し下奉りし時。同八月朔日鎌倉を立給ひ
J17_0228A02: しに。武州刺史朝直朝臣廿二歳の時。相模四郞と申
J17_0228A03: けるが。末代にこれほどの智者にあひ奉らんことか
J17_0228A04: たかるべしとて。御輿のまへにおひつき奉りて。事
J17_0228A05: の由を申されしかば。こしをかきすへて對面せられ
J17_0228A06: にけり。朝直朝臣申されけるは。身こそ武家に生た
J17_0228A07: りといへども。心は佛にかけたり。適人身をうけて。
J17_0228A08: 稀に明匠に逢奉れり。是併宿縁のしからしむるなる
J17_0228A09: べし。願くは家業を不捨して生死を可離道を敎へ
J17_0228A10: 給へと。律師の曰。年少の御身。武家のつはものと
J17_0228A11: して。此御尋に及事宿善の内に催すなるべし。凡佛
J17_0228A12: 敎多門なれども聖道淨土の二門を出ず。しかるに聖
J17_0228A13: 道門は有智持戒の人にあらずば。是を修行すべから
J17_0228A14: ず。淨土は極惡最下の機の爲に。極善最上の法を授
J17_0228A15: られたれば。有智無智をゑらばず。在家出家をきら
J17_0228A16: はず。彌陀他力の本願を信ずれば。往生うたがひな
J17_0228A17: し。就中末法に入て七百餘歳。時機相應の敎行はた
J17_0228B18: だ念佛の一門にかぎれり。是により飛錫禪師は末法
J17_0228B19: にのぞみて。餘行をもて生死をいとふは。陸地に船
J17_0228B20: を漕がごとく。他力をたのみて往生をねがふは水上
J17_0228B21: に船を浮が如しとの給へり。然れば名號本願の船に
J17_0228B22: のりて。彌陀如來を船師として。釋迦發遣の順風に
J17_0228B23: 帆をあげば。罪障の雲もしづまり。妄執の波もたた
J17_0228B24: ずして。一念須臾の間に。極樂世界の七寶の池の汀
J17_0228B25: にとづかん事。百即百生更にうたがひなし。此安心
J17_0228B26: たがひたまはずば。たとひ戰場に命を捨とも。往生
J17_0228B27: さはりあるべからずとの給ひければ。朝直朝臣忽に
J17_0228B28: 眞實の信心を發して。毎日六萬遍の念佛は。一期退
J17_0228B29: 轉すべからずと誓約せられけるが。三十餘年稱名の
J17_0228B30: 薰修をつみて。文永元年五十九歳の夏の頃。病惱を
J17_0228B31: うけられけるが。五月朔日出家して臨終の儀式にと
J17_0228B32: りむかはれしに。同三日申時。年來所持の彌陀如來
J17_0228B33: まのあたり病者に告て。此度穢土をおもひすつる事
J17_0228B34: は。偏に我力也。往生におきては決定なりとの給ひ

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