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J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0201A01: 後世を思ひ往生を願はん人は。上人の仰のごとく。
J17_0201A02: 今生にてはたとひいかなるふかき恨ありとも。更に
J17_0201A03: 其人のとがになし。遺恨を含む事なかれ。只偏に娑
J17_0201A04: 婆世界の習ぞと。造付たる穢土のとがに思なして。
J17_0201A05: やがて其を厭離穢土のたよりとして。欣求淨土のお
J17_0201A06: もひをますべきもの也。
J17_0201A07: 在國の間念佛弘通事
J17_0201A08: 上人在國の間。無常の理をとき念佛の行を勸給ひけ
J17_0201A09: れば。當國他國。近里遠村。道俗男女。貴賤上下群
J17_0201A10: 參する事盛なる市をなす。法然上人の化導により
J17_0201A11: て。或は自力難行の執情をすて。或は邪見放逸の振
J17_0201A12: 舞をあらためて。念佛往生を遂る人おほかりけれ
J17_0201A13: ば。洛陽の月卿雲客の歸依は年久敷。邊鄙の田夫野
J17_0201A14: 人の化導は日淺し。是則年來の本懷なりしか共。時
J17_0201A15: いまだいたらざれば。思ながら年月を送る所に。此
J17_0201A16: 時年來の本意を遂ぬる事。併朝恩也とぞ仰られけ
J17_0201A17: る。
J17_0201B18: 一念義停止事
J17_0201B19: 山門の西塔南谷の住侶に。金本坊の少輔とて聰敏の
J17_0201B20: 學生也けるが。最愛の兒に後れて交衆倦かりけれ
J17_0201B21: ば。三十六の歳。遁世して上人の弟子となり。念佛
J17_0201B22: 門に入て成覺坊と申けるが。天台宗にひきいれて。
J17_0201B23: 迹門の彌陀本門の彌陀を立て。十劫正覺といへる
J17_0201B24: は。迹門の彌陀也。本門の彌陀は無始本覺の如來成
J17_0201B25: がゆへ。彌陀と我等と全く差異なし。此謂をきく一
J17_0201B26: 念に事足ぬ。多念の數返甚無益なりといひて。一念
J17_0201B27: 義と云事を自立しけるを。上人彌陀の本願は極重最
J17_0201B28: 下の惡人を助け。愚癡淺識の諸機を救はんが爲なれ
J17_0201B29: ば。一形にはげみ念念にすてざる是正意也。無行
J17_0201B30: の一念義をたて。多念の數返を妨げん事不可然と
J17_0201B31: 仰られけるを承引せず。猶此義を興じければ。我弟
J17_0201B32: 子には非ずと棄置せられけり。兵部卿三位基親卿は。
J17_0201B33: 深く上人勸進の旨を信じて。毎日五萬返の數返をせ
J17_0201B34: られけるを。成覺坊一念義をもて。彼卿の數返を難じ

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