浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J17_0201A01: | 後世を思ひ往生を願はん人は。上人の仰のごとく。 |
J17_0201A02: | 今生にてはたとひいかなるふかき恨ありとも。更に |
J17_0201A03: | 其人のとがになし。遺恨を含む事なかれ。只偏に娑 |
J17_0201A04: | 婆世界の習ぞと。造付たる穢土のとがに思なして。 |
J17_0201A05: | やがて其を厭離穢土のたよりとして。欣求淨土のお |
J17_0201A06: | もひをますべきもの也。 |
J17_0201A07: | 在國の間念佛弘通事 |
J17_0201A08: | 上人在國の間。無常の理をとき念佛の行を勸給ひけ |
J17_0201A09: | れば。當國他國。近里遠村。道俗男女。貴賤上下群 |
J17_0201A10: | 參する事盛なる市をなす。法然上人の化導により |
J17_0201A11: | て。或は自力難行の執情をすて。或は邪見放逸の振 |
J17_0201A12: | 舞をあらためて。念佛往生を遂る人おほかりけれ |
J17_0201A13: | ば。洛陽の月卿雲客の歸依は年久敷。邊鄙の田夫野 |
J17_0201A14: | 人の化導は日淺し。是則年來の本懷なりしか共。時 |
J17_0201A15: | いまだいたらざれば。思ながら年月を送る所に。此 |
J17_0201A16: | 時年來の本意を遂ぬる事。併朝恩也とぞ仰られけ |
J17_0201A17: | る。 |
J17_0201B18: | 一念義停止事 |
J17_0201B19: | 山門の西塔南谷の住侶に。金本坊の少輔とて聰敏の |
J17_0201B20: | 學生也けるが。最愛の兒に後れて交衆倦かりけれ |
J17_0201B21: | ば。三十六の歳。遁世して上人の弟子となり。念佛 |
J17_0201B22: | 門に入て成覺坊と申けるが。天台宗にひきいれて。 |
J17_0201B23: | 迹門の彌陀本門の彌陀を立て。十劫正覺といへる |
J17_0201B24: | は。迹門の彌陀也。本門の彌陀は無始本覺の如來成 |
J17_0201B25: | がゆへ。彌陀と我等と全く差異なし。此謂をきく一 |
J17_0201B26: | 念に事足ぬ。多念の數返甚無益なりといひて。一念 |
J17_0201B27: | 義と云事を自立しけるを。上人彌陀の本願は極重最 |
J17_0201B28: | 下の惡人を助け。愚癡淺識の諸機を救はんが爲なれ |
J17_0201B29: | ば。一形にはげみ念念にすてざる是正意也。無行 |
J17_0201B30: | の一念義をたて。多念の數返を妨げん事不可然と |
J17_0201B31: | 仰られけるを承引せず。猶此義を興じければ。我弟 |
J17_0201B32: | 子には非ずと棄置せられけり。兵部卿三位基親卿は。 |
J17_0201B33: | 深く上人勸進の旨を信じて。毎日五萬返の數返をせ |
J17_0201B34: | られけるを。成覺坊一念義をもて。彼卿の數返を難じ |