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J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0200A01: しかしながら此事也。かく仰信をいたし。種種にき
J17_0200A02: らめき奉りて。溫室をいとなみ。美膳を備へ奉る。
J17_0200A03: 志顯れてぞ侍ける。上人は念佛往生の理端端授た
J17_0200A04: まひて。自行化他共に一向念佛なるべしとぞ仰られ
J17_0200A05: ければ。遠近の男女老少にいたるまで。傳へきく輩
J17_0200A06: 皆念佛に歸しけり。誠に世澆季に及で。これほどの
J17_0200A07: 上人に生れあひ奉て。化導を傳へ承らんだにも有難
J17_0200A08: かるべきに。可然次に親拜見し奉りて。供養をのぶ
J17_0200A09: る事宿縁目出度ぞ侍ける。此時上人詠じ給ひける。
J17_0200A10: 極樂もかくやあるらんあらたのし
J17_0200A11: はやまいらはや南無阿彌陀佛
J17_0200A12: 善通寺參詣事
J17_0200A13: 讚岐國小松の庄。弘法大師の建立。觀音靈驗の地。
J17_0200A14: 生福寺と申寺に付給ぬ。又同じき國。大師父の御爲
J17_0200A15: に立られたる。其名をかりて善通寺と云。此寺の記
J17_0200A16: 文に。ひとたび詣らん人人は。かならず一佛淨土の
J17_0200A17: 友たるべきよし侍りければ。今度の悅これにありと
J17_0200B18: て參り給けり。
J17_0200B19: 被遣津戸三郞返狀事
J17_0200B20: 上人流刑の事を。津戸三郞ふかく歎存ける餘り。武
J17_0200B21: 州より讚岐國へ使者を遣しける時。上人の御返事に
J17_0200B22: 云。七月十四日の御消息。八月廿一日に見候ぬ。遙
J17_0200B23: のさかひに。かやうに仰られて候御志申盡すべから
J17_0200B24: ず候。誠に然べき事にてかやうに候。とかく申ばか
J17_0200B25: りなく候。但し今生の事は是に付ても。我も人も思
J17_0200B26: 知べき事に候。いとひてもいとはんと思召べく候。け
J17_0200B27: ふあすとも知り候はぬ身に。かかる目を見候。心う
J17_0200B28: き事にて候へども。さればこそ穢土のならひにては
J17_0200B29: 候へ。只とくとく往生をせばやとこそ思ひ候へ。誰
J17_0200B30: も是を遺恨の事など夢にも不可思召候。然べき
J17_0200B31: 身の宿報と申。又穢惡充滿のさかひ。是に初めぬ事
J17_0200B32: にて候へば。何事に付てもただ急急往生をせんと
J17_0200B33: 思べき事に候。あなかしこあなかしこ。
J17_0200B34: 八月廿四日 源空判云云

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