浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J17_0196A01: | 早く最後に望めり。今生の恨み只此事にあり。我他 |
J17_0196A02: | 界の後なりと云とも。汝相構て連連に御氣色をうか |
J17_0196A03: | がひて。且はかくとぞ返返申置れて候へと申て勅免 |
J17_0196A04: | を申行べし。其のみぞ心にかかる事にてあると。能 |
J17_0196A05: | 能仰られければ。光親の卿。仰のむね更に如在を存 |
J17_0196A06: | べからず。便宜しかるべく候はん時。連つらに天氣 |
J17_0196A07: | を伺ひ候べしとて。涙をおさへて罷出にけり。さて |
J17_0196A08: | 禪定殿下御臨終正念にして。御念佛數十返如入禪 |
J17_0196A09: | 定して。同四月五日往生を遂させ給ひぬ。御年五十 |
J17_0196A10: | 八。いまだ惜かるべき程の御事也。上人國に下つか |
J17_0196A11: | せ給ひて。いくほどもなくて此事をきき給て。御念 |
J17_0196A12: | 佛日日に回向し奉り給ふ。一佛淨土誠にたのもしく |
J17_0196A13: | ぞ覺えし。 |
J17_0196A14: | 大納言律師配所下向事 |
J17_0196A15: | 上人配所へ趣たまひける同き日に。大納言律師の公 |
J17_0196A16: | 全今の二尊院聖信房湛空也同く西國へながされ侍りけるが。律師 |
J17_0196A17: | の舟は前に出ければ。上人の下らせ給ふとききて。 |
J17_0196B18: | 暫くおさへて上人の御船にのりうつり。一目見あげ |
J17_0196B19: | 奉りて。上人の御ひざにかしらをかたぶけて。泣哭 |
J17_0196B20: | 天をひびかすといへども。上人は驚給へる氣色おは |
J17_0196B21: | しまさず。念佛してましましける。さて律師の舟よ |
J17_0196B22: | りとくとくと申ければ。本のふねにのりうつりけ |
J17_0196B23: | り。 |
J17_0196B24: | 被著經島事 |
J17_0196B25: | 攝津國經の島に著し給ければ。村里男女老少まいり |
J17_0196B26: | あつまる事。濱の眞砂の數をしらず。此島は六波羅 |
J17_0196B27: | の大相國。一千部の法華經を石の面に書寫して。漫 |
J17_0196B28: | 漫たる波の底にしづむ。鬱鬱たる魚鱗をすくはんが |
J17_0196B29: | 爲也。安元の寶曆より初て未來際を盡すまで縁をむ |
J17_0196B30: | すぶ人人は。いまも石をひろひてぞ向ふなる。鳥羽 |
J17_0196B31: | 院の御時の事にや。平等院僧正行尊と申しは。故一 |
J17_0196B32: | 條院の御孫。天下無双の有驗高僧にておはしましけ |
J17_0196B33: | れば。天王寺の別當に補任せられて。拜堂の爲に下 |
J17_0196B34: | られける時。江口の遊君ども舟を近くよせければ。 |