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J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0194A01: らじ。此時にあたりて邊鄙の羣類を化せん事。莫大
J17_0194A02: の利益なるべし。但いたむ所は。源空が興ずる淨土
J17_0194A03: の法門は。濁世末代の衆生の決定出離の要道なるが
J17_0194A04: 故に守護の天等常隨すらん。我心には遺恨なしと
J17_0194A05: いへども。彼天等定て冥瞰をいたさんか。若然ば因
J17_0194A06: 果のむなしからざる事。いきて世に住せば思合らる
J17_0194A07: べし。因縁はつきずば。何ぞ又今生の再會なからん
J17_0194A08: や。信空上人後に云。先師の詞違はずして其むくひ
J17_0194A09: あり。何をもてか知るならば。承久の兵亂に。東夷
J17_0194A10: 上都をかるしめ。時の君は西海の島の中にましまし
J17_0194A11: て。多年心をいたましめ。臣は東土の道の傍にして。
J17_0194A12: 一旦に命を失ふ。先言のしるし有り後生ききとるべ
J17_0194A13: し。凡念佛停廢の沙汰ある毎に凶厲ならずといふ事
J17_0194A14: なし。人みな是をしれり。覶縷にあたはずと。此事
J17_0194A15: 筆端にのせ難しといへども。前事の忘れざる後事の
J17_0194A16: 師なりと云をもての故に。世のため人のため憚なが
J17_0194A17: ら是を記す。
J17_0194B18: 月輪殿被命置光親卿事
J17_0194B19: 月輪禪定殿下と申は。忠仁公十一代の後胤。法性寺
J17_0194B20: 殿の御息號後法性寺殿累代の攝錄の跡にましますうへ。朝家
J17_0194B21: の賢政。詩歌の才幹。君是をゆるし給ふに。世これ
J17_0194B22: を仰奉る。榮花重職の豪家にあそび給といへども。
J17_0194B23: 順次往生の眞門に御心をかけて。御出家の後は。數
J17_0194B24: 年上人を屈して。淨土の法門を談じ。出離の要道を
J17_0194B25: 尋給ふ。上人の頭光をまのあたり拜見し給ひて後
J17_0194B26: は。偏に生身の佛のおもひをなし奉り給ふ。はから
J17_0194B27: ざるに勅勘をかうむりて。遙なる西海の波にただよ
J17_0194B28: ひ給ふ。官人小松の御房にまいりて。時日をめぐら
J17_0194B29: さず。いそぎ配所へおもむきたまふべき旨を責申
J17_0194B30: に。禪定殿下此事を聞食より御歎尤ふかし。其故は
J17_0194B31: 去年建永元年三月七日。後京極の攝政殿。俄にさき
J17_0194B32: ただせ給ひき。本朝にたえて久しく成にける。曲水
J17_0194B33: の宴とり行給べき御營有て。中御門の御亭今更に玉
J17_0194B34: 鏡をみがき。風流を盡し。詩歌の題とも諸方へつか

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