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J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0193A01: いたむにはあらず。昔敎主釋尊の因行の時。檀施の
J17_0193A02: あまり父の大王にいましめられて。遙成山にこめら
J17_0193A03: れ給ひしか共。其志おこたりたまはずして。ます
J17_0193A04: ます佛道を修行し給しかば。彼山を釋迦山と名付て
J17_0193A05: 終に正覺の庭となりにけり。諸佛菩薩亦復如此。愚
J17_0193A06: 老何ぞ衆生をわたさざらんやと。かかる程に同月廿
J17_0193A07: 七日。上人還俗の姓名を給ふ。源元彥云云。配所土佐
J17_0193A08: 國と定められて。檢非違使小松の御房にむかひて宣
J17_0193A09: 下の旨をのべけり。禪定殿下の御計として法性寺の
J17_0193A10: 小御堂に逗留。同三月十六日都を出給ふ。信濃國の
J17_0193A11: 御家人。角張の成阿彌陀佛を棟梁として。惣て我も
J17_0193A12: われもと參勤の人人六十餘人とぞきこえし。此次第
J17_0193A13: を見る人人歎悲みければ。かれをいさめ給ひける詞
J17_0193A14: に云。驛路はこれ大聖の住所也。漢家には一行阿闍
J17_0193A15: 梨。日域には役優娑塞。謫所は又權化の栖所なり。
J17_0193A16: 震旦には白樂天。吾朝には菅丞相也。在纒出纒みな
J17_0193A17: 火宅也と云云。角張は俗姓もいやしからず。王家をま
J17_0193B18: もり朝敵を平ぐといへども。本師上人に隨て奴とな
J17_0193B19: り僕と成。ちからを盡して御輿をかく。菜つみ水汲
J17_0193B20: む役をいとはず。身を捨てつかえんとす。爰上人一
J17_0193B21: 人の弟子に對して一向專念の義をのべ給に。西阿彌
J17_0193B22: 陀佛といふ弟子推參して。如此の御義ゆめゆめあ
J17_0193B23: るべからず候。各御返事を申さるべからずと申けれ
J17_0193B24: ば。上人曰。汝經釋の文を見ずやと。西阿申さく。
J17_0193B25: 經釋の文は然といへども。世間の譏嫌を存する計也
J17_0193B26: と。上人又云。彌陀の本願は是愚痴暗鈍の輩。罪惡
J17_0193B27: 生死の類の出離解脱の直路也。我くびをきらるる
J17_0193B28: 共。この事をいはずば有べからずとて。御氣色尤至
J17_0193B29: 誠也。見奉る人人涙を流して隨喜す。時に信空上人
J17_0193B30: 申云。衰邁の御身。遠境の旅に出ましましなば。再
J17_0193B31: 會いつをか期せん。音容共に今を限れり。所犯なく
J17_0193B32: して流刑の宣をかうぶり給ふ。跡にとどまる身の爲
J17_0193B33: 何の面かあらんといひて。胸うちて歎息す。上人曰。
J17_0193B34: 予齡既に八旬にせまる。たとひ帝京にありとも久か

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