浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J17_0193A01: | いたむにはあらず。昔敎主釋尊の因行の時。檀施の |
J17_0193A02: | あまり父の大王にいましめられて。遙成山にこめら |
J17_0193A03: | れ給ひしか共。其志おこたりたまはずして。ます |
J17_0193A04: | ます佛道を修行し給しかば。彼山を釋迦山と名付て |
J17_0193A05: | 終に正覺の庭となりにけり。諸佛菩薩亦復如此。愚 |
J17_0193A06: | 老何ぞ衆生をわたさざらんやと。かかる程に同月廿 |
J17_0193A07: | 七日。上人還俗の姓名を給ふ。源元彥云云。配所土佐 |
J17_0193A08: | 國と定められて。檢非違使小松の御房にむかひて宣 |
J17_0193A09: | 下の旨をのべけり。禪定殿下の御計として法性寺の |
J17_0193A10: | 小御堂に逗留。同三月十六日都を出給ふ。信濃國の |
J17_0193A11: | 御家人。角張の成阿彌陀佛を棟梁として。惣て我も |
J17_0193A12: | われもと參勤の人人六十餘人とぞきこえし。此次第 |
J17_0193A13: | を見る人人歎悲みければ。かれをいさめ給ひける詞 |
J17_0193A14: | に云。驛路はこれ大聖の住所也。漢家には一行阿闍 |
J17_0193A15: | 梨。日域には役優娑塞。謫所は又權化の栖所なり。 |
J17_0193A16: | 震旦には白樂天。吾朝には菅丞相也。在纒出纒みな |
J17_0193A17: | 火宅也と云云。角張は俗姓もいやしからず。王家をま |
J17_0193B18: | もり朝敵を平ぐといへども。本師上人に隨て奴とな |
J17_0193B19: | り僕と成。ちからを盡して御輿をかく。菜つみ水汲 |
J17_0193B20: | む役をいとはず。身を捨てつかえんとす。爰上人一 |
J17_0193B21: | 人の弟子に對して一向專念の義をのべ給に。西阿彌 |
J17_0193B22: | 陀佛といふ弟子推參して。如此の御義ゆめゆめあ |
J17_0193B23: | るべからず候。各御返事を申さるべからずと申けれ |
J17_0193B24: | ば。上人曰。汝經釋の文を見ずやと。西阿申さく。 |
J17_0193B25: | 經釋の文は然といへども。世間の譏嫌を存する計也 |
J17_0193B26: | と。上人又云。彌陀の本願は是愚痴暗鈍の輩。罪惡 |
J17_0193B27: | 生死の類の出離解脱の直路也。我くびをきらるる |
J17_0193B28: | 共。この事をいはずば有べからずとて。御氣色尤至 |
J17_0193B29: | 誠也。見奉る人人涙を流して隨喜す。時に信空上人 |
J17_0193B30: | 申云。衰邁の御身。遠境の旅に出ましましなば。再 |
J17_0193B31: | 會いつをか期せん。音容共に今を限れり。所犯なく |
J17_0193B32: | して流刑の宣をかうぶり給ふ。跡にとどまる身の爲 |
J17_0193B33: | 何の面かあらんといひて。胸うちて歎息す。上人曰。 |
J17_0193B34: | 予齡既に八旬にせまる。たとひ帝京にありとも久か |