浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J17_0184A01: | の病惱を愈したまへと。懇に申のべ給ひければ。善 |
J17_0184A02: | 導の御影の御前に異香しきりに薰じ。上人も聖覺も |
J17_0184A03: | 共に瘧病おちにければ。故法印は雨をくだして名を |
J17_0184A04: | あぐ。聖覺が身には此事尤奇特也とぞ申されける。 |
J17_0184A05: | まことに末代の奇特。その比の口遊にぞ侍ける。 |
J17_0184A06: | 抑靈魔等の或は結縁のため。或は聞法のために。久 |
J17_0184A07: | 修練行智德高貴の人に託する事これおほし。昔三井 |
J17_0184A08: | の大阿闍梨の所勞と聞給て。惠心僧都とぶらひにわ |
J17_0184A09: | たり給ひたりければ。阿闍梨臥ながらのたまわく。 |
J17_0184A10: | 病患術なく候て行法すでに退轉し侍ぬ。かくて死侍 |
J17_0184A11: | らば一定地獄に落はんべりなんと。悲くこそ侍れと |
J17_0184A12: | 申されし時。されば地獄と云ふ所の侍ふかと惠心僧 |
J17_0184A13: | 都のたまひしかば。さてさは侍るぞかしと阿闍梨又 |
J17_0184A14: | の給ひければ。惠心は地獄なき義をたて。阿闍梨は |
J17_0184A15: | 地ごくある義をのぶ。おはりに病床に起居て。高聲 |
J17_0184A16: | に難詰會釋の間。やうやく兩三時におよぶに。天井 |
J17_0184A17: | にこゑありて云。あなたうと。今は罷歸り侍なん。 |
J17_0184B18: | かかる貴き事や承り侍るとて。まいりて侍しほど |
J17_0184B19: | に。さる事も候はで今まで侍りつるこそ恐れ存候へ |
J17_0184B20: | と云云。即阿闍梨の心地さはやかに成給ぬ。人これを |
J17_0184B21: | 怪ければ。惠心僧都の仰られけるは。推するむかし |
J17_0184B22: | 智行ありて貴とかりける人の。魔道に落たるが。法 |
J17_0184B23: | 文を聞て妄執をとらせん爲に。學德のもととて尋入 |
J17_0184B24: | て伺所に。今の義を聞て隨喜して去なるべしと云云。 |
J17_0184B25: | かれをもて是をおもふに。今上人の病惱その義更に |
J17_0184B26: | 違べからず。きかん人ゆめゆめ疑事なかれ。但又古 |
J17_0184B27: | 老の口傳には。上人門弟等の中に。本願に歸したる |
J17_0184B28: | 三心具足の念佛者は。瘧病如きの病を不可受と申 |
J17_0184B29: | けるを。一人の弟子ありて。たとひ三心具足の行者 |
J17_0184B30: | なりとも。業報限あらんものは。いかでかこれを受ざ |
J17_0184B31: | らんやと論じ申事の侍るを。上人障子をへだてて聞 |
J17_0184B32: | 給ひけるが障子をあけて。念佛者は瘧病すべからず |
J17_0184B33: | といはば。さては源空が瘧病したらんは。いかがあ |
J17_0184B34: | るべきと仰られけるが。翌日に瘧病をし出し給へり |