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J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0184A01: の病惱を愈したまへと。懇に申のべ給ひければ。善
J17_0184A02: 導の御影の御前に異香しきりに薰じ。上人も聖覺も
J17_0184A03: 共に瘧病おちにければ。故法印は雨をくだして名を
J17_0184A04: あぐ。聖覺が身には此事尤奇特也とぞ申されける。
J17_0184A05: まことに末代の奇特。その比の口遊にぞ侍ける。
J17_0184A06: 抑靈魔等の或は結縁のため。或は聞法のために。久
J17_0184A07: 修練行智德高貴の人に託する事これおほし。昔三井
J17_0184A08: の大阿闍梨の所勞と聞給て。惠心僧都とぶらひにわ
J17_0184A09: たり給ひたりければ。阿闍梨臥ながらのたまわく。
J17_0184A10: 病患術なく候て行法すでに退轉し侍ぬ。かくて死侍
J17_0184A11: らば一定地獄に落はんべりなんと。悲くこそ侍れと
J17_0184A12: 申されし時。されば地獄と云ふ所の侍ふかと惠心僧
J17_0184A13: 都のたまひしかば。さてさは侍るぞかしと阿闍梨又
J17_0184A14: の給ひければ。惠心は地獄なき義をたて。阿闍梨は
J17_0184A15: 地ごくある義をのぶ。おはりに病床に起居て。高聲
J17_0184A16: に難詰會釋の間。やうやく兩三時におよぶに。天井
J17_0184A17: にこゑありて云。あなたうと。今は罷歸り侍なん。
J17_0184B18: かかる貴き事や承り侍るとて。まいりて侍しほど
J17_0184B19: に。さる事も候はで今まで侍りつるこそ恐れ存候へ
J17_0184B20: 云云。即阿闍梨の心地さはやかに成給ぬ。人これを
J17_0184B21: 怪ければ。惠心僧都の仰られけるは。推するむかし
J17_0184B22: 智行ありて貴とかりける人の。魔道に落たるが。法
J17_0184B23: 文を聞て妄執をとらせん爲に。學德のもととて尋入
J17_0184B24: て伺所に。今の義を聞て隨喜して去なるべしと云云
J17_0184B25: かれをもて是をおもふに。今上人の病惱その義更に
J17_0184B26: 違べからず。きかん人ゆめゆめ疑事なかれ。但又古
J17_0184B27: 老の口傳には。上人門弟等の中に。本願に歸したる
J17_0184B28: 三心具足の念佛者は。瘧病如きの病を不可受と申
J17_0184B29: けるを。一人の弟子ありて。たとひ三心具足の行者
J17_0184B30: なりとも。業報限あらんものは。いかでかこれを受ざ
J17_0184B31: らんやと論じ申事の侍るを。上人障子をへだてて聞
J17_0184B32: 給ひけるが障子をあけて。念佛者は瘧病すべからず
J17_0184B33: といはば。さては源空が瘧病したらんは。いかがあ
J17_0184B34: るべきと仰られけるが。翌日に瘧病をし出し給へり

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