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J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0183A01: 給ひけり。
J17_0183A02: 瘧病の事
J17_0183A03: 同年八月。北白川二階房にして。上人瘧病をし出し
J17_0183A04: 給て。小松殿へ歸り給ひぬ。門弟等或は念佛を申て
J17_0183A05: おとし奉らんといふ人もあり。或は上人へ參りかか
J17_0183A06: るほどの物には。我等が力は叶べからずと申人もあ
J17_0183A07: り。或は又結縁のためにまいる歟といふ人もあり。
J17_0183A08: 禪定殿下此事を聞し召して。種種に療治を加へらる
J17_0183A09: といへども叶はざりければ。禪定殿下われ案を迴ら
J17_0183A10: せり。善導の御影を圖繪し奉りて。聖覺を唱導とし
J17_0183A11: て上人のまへにて供養をとげ。淨土の法門を稱し。
J17_0183A12: 彌陀の本願を解説せしめん。隨喜の心を發して除病
J17_0183A13: の効驗もありぬべしとて。詫摩法眼證賀に仰て。御
J17_0183A14: 影を圖繪せられ。後京極殿その銘をかかしめ給ふ。
J17_0183A15: 聖覺法印于時僧都の許へ。御導師に參勤すべきよし仰ら
J17_0183A16: れければ。聖覺も瘧病を仕侍る。明日は發日にあた
J17_0183A17: り侍れども。且は師匠の報恩也。爭か子細を申べき
J17_0183B18: や。但早旦に御佛事を初らるべしとて。翌日拂曉に
J17_0183B19: 小松殿へ參入して。聖覺も今日おこり日にて候。何
J17_0183B20: 時計におこらせ給ひ候やらんと申ければ。申の時計
J17_0183B21: におこり侍る也と。上人曰。聖覺はまたとく發り候
J17_0183B22: 也。尤いそがるべしとて。巳時の初に説法をはじめ
J17_0183B23: て。申の終に結願せられけるに。御導師本願の奧義
J17_0183B24: をのべ。大師釋尊も衆生に同ずる時は。常に病惱を
J17_0183B25: うけ。療治を用給き。況や凡夫血肉の身いかでか其
J17_0183B26: 愁なからんや。雖然此道理を知ざる淺智愚鈍の衆
J17_0183B27: 生。定めて疑心をなし不信をいたさんか。善導和尚
J17_0183B28: 諸宗の敎相によらずして。淨土宗を興じて一向專修
J17_0183B29: の行をたて。本願稱名の義をひろめ給事は。末代惡
J17_0183B30: 世の根機に相應して。順次に生死を離るべき要法な
J17_0183B31: るが故に。上人これを弘通し給ふに。化導既に佛意
J17_0183B32: に叶て。まのあたり往生を遂るもの千萬なり。然ば
J17_0183B33: 諸佛菩薩諸天龍神。いかでか衆生の不信を歎かざら
J17_0183B34: ん。四天大王佛法を守護すべくば。必ず我大師上人

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