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J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0176A01: 元久元年十月の頃。山門衆徒の蜂起。大講堂の庭に
J17_0176A02: 三塔會合して專修念佛を停止せらるべきよし。天台
J17_0176A03: 座主に訴へ申によりて。座主大僧正より上人に御尋
J17_0176A04: あるに付て。上人起請文を進らる。その詞に云。近
J17_0176A05: 日風聞して云。源空偏に念佛の敎門をすすめて。自
J17_0176A06: 餘の敎法を謗る事。諸宗是によりて陵夷し。諸行是
J17_0176A07: によりて滅亡すと云云。此旨を傳へ承に心神驚怖す。
J17_0176A08: 遂に事山門に聞え。其議衆徒に及て炳誡を可加之
J17_0176A09: 由貫首に申送らる。此條は一には衆勘を恐れ。一に
J17_0176A10: は衆恩を喜ぶ。恐るる所は。貧道が身をもて忽に山
J17_0176A11: 洛のいきどほりに及ばん事を。悅ぶ所は謗法の名を
J17_0176A12: 消して。永く花夷の謗を止めん事を。若衆徒の糺斷
J17_0176A13: にあらずば。いかでか貧道か愁歎を慰めんや。凡彌
J17_0176A14: 陀の本願に云。唯除五逆誹謗正法と。念佛をすすむ
J17_0176A15: る輩。いかでか正法を謗ぜん。又惠心の要集には一
J17_0176A16: 實の道を聞て。普賢の願海に入と。淨土を欣たぐひ。
J17_0176A17: 豈妙法を捨んや。就中源空壯年の昔は。天台の敎釋
J17_0176B18: を披て三觀のとぼそにつらなる。衰老の今は善導の
J17_0176B19: 章疏を伺ひて。九品の境にのぞむといへども。舊執
J17_0176B20: なを存す。本心何忘れん。只冥鑒をたのみ。只衆察
J17_0176B21: を仰ぐ。但老門遁世の輩。愚昧出家の類ひ。或は草
J17_0176B22: 房に入て髮をそり。或は松門に臨て志をいふ。次に
J17_0176B23: 極樂をもつて所期とすべし。念佛をもて所行とすべ
J17_0176B24: きよし時時諷諫す。是則齡衰て自餘の練行に能は
J17_0176B25: ず。性鈍にして聖道の研精に堪へざる間。しばらく
J17_0176B26: 難解難入の門を閣て。試に易行易往の道を示すな
J17_0176B27: り。佛智なを方便をまうけ給ふ。凡愚あに斟酌なか
J17_0176B28: らんや。敢て敎の是非を存するにあらず。機の堪否
J17_0176B29: を思也。此條もし法滅の縁たるべくば。向後は宜く
J17_0176B30: 停止に從ふべし。此外に僻説をもて弘通し。虚誕を
J17_0176B31: もて宣聞せば。尤糺斷あるべし。尤炳誡あるべし。
J17_0176B32: 願所也望む所也。此等の子細は。先年沙汰の時。起
J17_0176B33: 請文を進じ畢ぬ。其後いまに變ぜず。重て陳するに
J17_0176B34: 能ずといへども。嚴誡すでに重疊の間。誓文亦再三

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