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J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0174A01: 代の豪の武者也。手にかけて名をあげよと名のりけ
J17_0174A02: れば。十八人の者共は各支度したる事なれば。心を
J17_0174A03: 同じくして戰けるに。十二人は甘糟が手にかかりて
J17_0174A04: うたれぬ。甘糟は殘六人の手にかかりてけるが。深
J17_0174A05: 手をおひける上。太刀は半より打折れたり。今はか
J17_0174A06: くと覺えければ。太刀を捨て甲をぬぎて。掌を合せ
J17_0174A07: 一心に彌陀を念じ高聲念佛して。敵の爲に命をまか
J17_0174A08: せけるに。紫雲たなびき音樂聞えければ。遠近の人
J17_0174A09: あやしまじと云事なし。上人は椽に行道しておはし
J17_0174A10: けるに。東坂に當て紫雲の見えければ。此靈雲こそ
J17_0174A11: あやしけれ。一定甘糟が往生しつると覺ゆるとぞ仰
J17_0174A12: られける。國に留をく妻子のもとへ此よしを告遣し
J17_0174A13: けるに。臨終の夜妻の夢に往生したる由を示しけれ
J17_0174A14: ば。驚て使をのぼせけるに。京より下ける使に行あ
J17_0174A15: ひて。戰場にての往生のありさま。田舍にてのゆめ
J17_0174A16: の告。互に不思議なりし事を談けり。本願の不思議
J17_0174A17: といひながら。合戰の場に靈瑞を現じ。眼前の往生
J17_0174B18: を遂ぬる事。眞に希代の奇特なりしかば。打手六人
J17_0174B19: の輩。いかなれば甘糟は在俗の身たりながら。ふか
J17_0174B20: く本願を信じて合戰の場に往生を遂ぬるぞ。いかな
J17_0174B21: る我等なれば頭を剃。衣をそめながら。在俗の身に
J17_0174B22: も及ばざるらんと改悔をなし。心を發して。且は甘
J17_0174B23: 糟の後世をも吊。且は罪障懺悔のためにとて本坊へ
J17_0174B24: 不歸。やがてそれより出て諸國を修行して。靈佛靈
J17_0174B25: 社に步を運びけるが。武藏國をとをりける時。或所
J17_0174B26: にて供養をのぞみけるに。法師は心うきものと思と
J17_0174B27: る事ありといひて。四壁のうちへも入ざりければ。
J17_0174B28: そのゆへを問に。これは山門の堂衆の爲に命を失へ
J17_0174B29: る甘糟が遺跡也。法師に命を奪はれたるゆへに。法
J17_0174B30: 師は皆うとましき也と。答ければ。我等こそ其人を
J17_0174B31: うしなひし敵なれ。我等一列の豪の武者十八人侍り
J17_0174B32: しに。十二人は甘糟にうたれき。甘糟をば殘六人の
J17_0174B33: 手にかけしに。忽に奇特をあらはし。眼前に往生を
J17_0174B34: 遂られしを見て發心せり。かかる往生人を手にかけ

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