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J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0160A01: き。只めせとて御使を出されてめされけるに。一言
J17_0160A02: の式代にも 不及。やがてめしに隨て同座をたま
J17_0160A03: はり。近近祇候して聽聞仕りけり。往生極樂は當來
J17_0160A04: の果報なを遠し。怱ちに堂上をゆるされ。今生の果
J17_0160A05: 報を感じぬる事。本願念佛を行ぜずば。爭か此式に
J17_0160A06: 及べきと。耳目驚してぞ見えにける。あからさまに
J17_0160A07: も西をうしろにせざりければ。京より關東へ下りけ
J17_0160A08: る時も。逆樣に馬にも乘けるとかや。念念相續して
J17_0160A09: 畢命爲期の外。他事なかりけるが。建永元年八月に。
J17_0160A10: 蓮西は。明年二月八日往生すべきなり。申所もし不
J17_0160A11: 審を殘さん人は。來臨して見知すべきよし。武藏國
J17_0160A12: 村岡の市庭に札をたてける間。傳へきく輩遠近を分
J17_0160A13: ず。武藏・相模・甲斐・信濃・越後・上野等の國國
J17_0160A14: より。熊谷が宿所へ羣集する事いく千萬といふ事を
J17_0160A15: 知らず。すでに其日になりければ。蓮西未明に沐浴
J17_0160A16: して。禮盤に上りて高聲に念佛。體をせむる事たと
J17_0160A17: えん物なし。暫くし有て蓮西目を開て今日の往生は
J17_0160B18: 延引すべし。來九月四日必ず本意を遂べし。其日各
J17_0160B19: 來臨あるべきよしを示しければ。羣集の諸人そしり
J17_0160B20: をなして歸りぬ。戀西が妻子眷屬等は。人のあざけ
J17_0160B21: りをかなしみ。蓮西が實なき事を歎ければ。彌陀如
J17_0160B22: 來の御告によりて來九月を契る所也。全く蓮西が私
J17_0160B23: の計にあらず。九月の往生もしなを延引せば。彌陀
J17_0160B24: 如來の御そらごとなるべし。更に蓮西が不實には不
J17_0160B25: 可成と。ことごとしげにぞ申ける。さてひまゆく
J17_0160B26: 駒の足はやければ。九月四日にもなりぬ。後夜に沐
J17_0160B27: 浴して漸臨終の用意あり。諸人また羣集する事盛成
J17_0160B28: 市の如し。蓮西洛陽より武州へ下ける時。來迎の彌
J17_0160B29: 陀の三尊。無數の化佛菩薩を。上人の意巧にてかか
J17_0160B30: せられて祕藏せられけるを。京つとに給たりける
J17_0160B31: を。臨終佛にかけ奉りて。禮盤にのぼり。端坐合掌
J17_0160B32: して。高聲念佛熾盛にして。巳尅に念佛とともに息
J17_0160B33: とどまる時。口より少光りを放つ。長さ五六寸也。
J17_0160B34: 紫雲目をすまし。音樂耳を驚かす。異香室にみち大

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