浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J17_0159A01: | 若腹をもきり命をも捨て。後世は助からんずるぞと |
J17_0159A02: | 承らば。やがて腹をも切らん料也とぞ申ける。法印 |
J17_0159A03: | 此事を聞きたまひて。さる高名のものなれば。定め |
J17_0159A04: | て存知あるらんとて。後生助かる道は法然房に可 |
J17_0159A05: | 被尋とて。使をそへて上人に引導せられければ。 |
J17_0159A06: | 上人へ參り。後世の事を尋申けるに。念佛だにも申 |
J17_0159A07: | せば往生はする也。別の事なしと仰られけるをうけ |
J17_0159A08: | 給て。さめざめと泣ければ。けしからず思召て物を |
J17_0159A09: | もおほせられず。暫く有て後。何事にて泣給ふそと |
J17_0159A10: | 仰られければ。命をも捨て手足をも切てぞ。後生は |
J17_0159A11: | 助からんずるとぞ承らんずらんとぞんずる所に。只 |
J17_0159A12: | 念佛だにも申せば往生はするぞとやすやすと仰をか |
J17_0159A13: | ふむり侍れば。餘にうれしくて泣き侍るよしを申け |
J17_0159A14: | る。一文不通のあら武者なりといへども。誠に後世 |
J17_0159A15: | をおそれたるものと見えければ。無智の罪人の念佛 |
J17_0159A16: | 申て往生すること。本願の正意なりとて。口稱念佛 |
J17_0159A17: | 凡夫直往の要路なるよし。常に示し給ひければ。二 |
J17_0159B18: | 心なき專修の行者にてぞありける。もし命をもすて |
J17_0159B19: | 後生助かれとならば。腹をきらん爲の用意にもちた |
J17_0159B20: | りける刀をば。念佛申て往生すべきよしを承り定め |
J17_0159B21: | ぬるうへはとて。上人に參らせければ。上人より津 |
J17_0159B22: | 戸三郞に給て祕藏しける。或時上人月輪殿へ參られ |
J17_0159B23: | けれは。熊谷入道推參して御ともにまいりけるを。 |
J17_0159B24: | とどめばやと思召けれども。さるくせ者なれば。中 |
J17_0159B25: | なかあしかりぬへしと思食て。被仰旨なかりけれ |
J17_0159B26: | ば。月輪殿に參りて。くつぬぎに有て。椽に手うち |
J17_0159B27: | かけ。よりかかりて侍けるが。御談義のこゑの幽に |
J17_0159B28: | 聞えければ。此入道申けるは。あはれ穢土ほどの口惜 |
J17_0159B29: | 所はあらじ。極樂にはかかる差別あるまじきものを。 |
J17_0159B30: | 談義の御こゑもきこえばこそと。しかり聲に。高聲 |
J17_0159B31: | に申けるを。禪定殿下きこし召して。なにものぞと仰 |
J17_0159B32: | られければ。熊谷入道とて。武藏國より罷のぼりた |
J17_0159B33: | る曲者にて候が。推參に共をして候とおぼえ候と上 |
J17_0159B34: | 人申されければ。やさしきもの何かくるしかるべ |