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J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0156A01: 作ぬべし。菩提心を起せる人は千萬人の中にも稀な
J17_0156A02: るべしと仰らるると見て夢覺ぬ。後彼僧も軈て發心
J17_0156A03: して實の道に入にき。山門の桓舜僧都と云ひし者。
J17_0156A04: 貧道無力を歎て。山王に祈請せしに。其しるしなか
J17_0156A05: りしかば。山王を恨奉て。離山して稻荷の社に祈請
J17_0156A06: せし時。千石と云ふ札を額にをさせたもふと。夢に
J17_0156A07: 見て悅思ふ處に。後日の夢に日吉山王の御制止あれ
J17_0156A08: ば。先の札を召返す也と示し給ふ間。夢の中に申け
J17_0156A09: るは。我御計こそましまさざらめ。よ所の御惠をさ
J17_0156A10: へお障礙こそ心得がたく侍れと申時。我は小神にて
J17_0156A11: 思ひもわかず。日吉は大神にて知らせ給ふゆへに。
J17_0156A12: 桓舜は此度生死を離るべきもの也。若今生の榮花あ
J17_0156A13: らば。障と成て出離かたかるべきゆへに。申とも聞
J17_0156A14: 入ぬ也と仰の侍れば。取返すなりと仰られける時。
J17_0156A15: 夢の心地にも實に深き御慈悲の程の辱なく覺へけれ
J17_0156A16: ば。夢さめて後やがて本山にかへりて。一筋に後生
J17_0156A17: 菩提をいのりて。遂に往生を遂き。行基菩薩の御遺
J17_0156B18: 誡に一世の榮花利養は。多生輪迴の基也と書れたる
J17_0156B19: も。思合られ侍り。後世を祈り。實の道に入を感應
J17_0156B20: 有事は何の神も皆同御心也。それにとりて出離の道
J17_0156B21: 區區なりといへども。末世相應の念佛をすすめて往
J17_0156B22: 生をいのるを。誠に神明の御本意とし給へり。其證
J17_0156B23: 據少少是をいださば。日吉山王の社頭に不斷念佛を
J17_0156B24: はじめをかるべきのよし。保延三年八月廿三日の
J17_0156B25: 夜。東塔の慈門坊賢運が夢に示し給て聖眞子のやし
J17_0156B26: ろに不斷念佛をはじめをきて後。第三日の夜。橫川
J17_0156B27: の般若谷の玉泉坊。此念佛結縁の爲に。通夜して念
J17_0156B28: 佛を勤しに。行道の間立ながらちと睡眠せし夢に。
J17_0156B29: 神殿のみすをかかげて。貴僧の體に覺へて。
J17_0156B30: ちはやふる玉のすたれをまきあけて
J17_0156B31: 念佛のこゑをきくそうれしき
J17_0156B32: と示されける。御こゑを通夜したる人兩三人。或は
J17_0156B33: ねぶりて夢の内に是をきく人もあり。或はふしなが
J17_0156B34: ら現にこれをきく人もあり。互に是をかたりて神明

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