浄土宗全書を検索する
AND検索:複数の検索語をスペースで区切って入力すると、前後2行中にそれらを全て含む箇所を検索します。
巻_頁段行 | 本文 |
---|---|
J17_0156A01: | 作ぬべし。菩提心を起せる人は千萬人の中にも稀な |
J17_0156A02: | るべしと仰らるると見て夢覺ぬ。後彼僧も軈て發心 |
J17_0156A03: | して實の道に入にき。山門の桓舜僧都と云ひし者。 |
J17_0156A04: | 貧道無力を歎て。山王に祈請せしに。其しるしなか |
J17_0156A05: | りしかば。山王を恨奉て。離山して稻荷の社に祈請 |
J17_0156A06: | せし時。千石と云ふ札を額にをさせたもふと。夢に |
J17_0156A07: | 見て悅思ふ處に。後日の夢に日吉山王の御制止あれ |
J17_0156A08: | ば。先の札を召返す也と示し給ふ間。夢の中に申け |
J17_0156A09: | るは。我御計こそましまさざらめ。よ所の御惠をさ |
J17_0156A10: | へお障礙こそ心得がたく侍れと申時。我は小神にて |
J17_0156A11: | 思ひもわかず。日吉は大神にて知らせ給ふゆへに。 |
J17_0156A12: | 桓舜は此度生死を離るべきもの也。若今生の榮花あ |
J17_0156A13: | らば。障と成て出離かたかるべきゆへに。申とも聞 |
J17_0156A14: | 入ぬ也と仰の侍れば。取返すなりと仰られける時。 |
J17_0156A15: | 夢の心地にも實に深き御慈悲の程の辱なく覺へけれ |
J17_0156A16: | ば。夢さめて後やがて本山にかへりて。一筋に後生 |
J17_0156A17: | 菩提をいのりて。遂に往生を遂き。行基菩薩の御遺 |
J17_0156B18: | 誡に一世の榮花利養は。多生輪迴の基也と書れたる |
J17_0156B19: | も。思合られ侍り。後世を祈り。實の道に入を感應 |
J17_0156B20: | 有事は何の神も皆同御心也。それにとりて出離の道 |
J17_0156B21: | 區區なりといへども。末世相應の念佛をすすめて往 |
J17_0156B22: | 生をいのるを。誠に神明の御本意とし給へり。其證 |
J17_0156B23: | 據少少是をいださば。日吉山王の社頭に不斷念佛を |
J17_0156B24: | はじめをかるべきのよし。保延三年八月廿三日の |
J17_0156B25: | 夜。東塔の慈門坊賢運が夢に示し給て聖眞子のやし |
J17_0156B26: | ろに不斷念佛をはじめをきて後。第三日の夜。橫川 |
J17_0156B27: | の般若谷の玉泉坊。此念佛結縁の爲に。通夜して念 |
J17_0156B28: | 佛を勤しに。行道の間立ながらちと睡眠せし夢に。 |
J17_0156B29: | 神殿のみすをかかげて。貴僧の體に覺へて。 |
J17_0156B30: | ちはやふる玉のすたれをまきあけて |
J17_0156B31: | 念佛のこゑをきくそうれしき |
J17_0156B32: | と示されける。御こゑを通夜したる人兩三人。或は |
J17_0156B33: | ねぶりて夢の内に是をきく人もあり。或はふしなが |
J17_0156B34: | ら現にこれをきく人もあり。互に是をかたりて神明 |