浄土宗全書を検索する
AND検索:複数の検索語をスペースで区切って入力すると、前後2行中にそれらを全て含む箇所を検索します。
巻_頁段行 | 本文 |
---|---|
J17_0155A01: | 心をやはらげて。佛法を信ずる方便とし給へり。靑 |
J17_0155A02: | き事は藍より出て。藍よりも靑し。貴きことは佛よ |
J17_0155A03: | り出て佛よりも貴は。只是和光明神の利益也。我朝 |
J17_0155A04: | の古德みな寺をたて給ひし時。必ず先鎭守を崇め。 |
J17_0155A05: | 守護神を勸請する事は。和光の方便を離ては佛法立 |
J17_0155A06: | 難きゆへ也。吾國に生を受けん人は本地の深き利益 |
J17_0155A07: | を仰ぎ。和光の深き方便を信ずべきもの也。遠事は |
J17_0155A08: | 且くをく。承久逆亂の時。諸國庄薗をだしき所なか |
J17_0155A09: | りしかば。あやしみの賤男。賤の女までも。みな家 |
J17_0155A10: | を捨て。佛寺の帳内にこもり。里を離て神社のつゐ |
J17_0155A11: | 垣のうちにあつまりき。尾張國あつ田の社に。國中 |
J17_0155A12: | の上下羣集せし中に。或は昨日親にをくれたるもの |
J17_0155A13: | もあり。或は今日子を生るものもあり。神官宮人し |
J17_0155A14: | きりに制止すれどもかなはざりしかば。大明神をお |
J17_0155A15: | ろし奉りて御託宣をあふぐべしとて。御神樂をまい |
J17_0155A16: | らせ。諸人同心に祈請せしに。一の禰宜に託して。 |
J17_0155A17: | 我天より下て此國に跡をたるる事は。萬人をはぐく |
J17_0155B18: | まんが爲也。然に今天魔國を亂り。人民心を失へり。 |
J17_0155B19: | 和光の擁護豈此時にあらずや。折にこそよれ。忌ま |
J17_0155B20: | しきぞと仰られしかば。諸人一同にこゑをあげて。 |
J17_0155B21: | 渴仰の涙をながし。隨喜の袖をしぼりき。これ全く |
J17_0155B22: | 後世の資糧にあらずといへども。當時擁護如此。何 |
J17_0155B23: | 況後世菩提をいのらんにおきておや。されば今生を |
J17_0155B24: | いのるよりも。後生を申を殊に明神納受し給ふ證 |
J17_0155B25: | 據。少少是を出さば。昔園城寺。山門の爲に燒拂は |
J17_0155B26: | れて堂塔僧坊佛像經卷のこる所なかりしかば。寺僧 |
J17_0155B27: | も山野にまよひ。靈地も礎の跡のみ殘りし。或寺僧 |
J17_0155B28: | 一人。新羅大明神へ參りて通夜したりし夜のゆめ |
J17_0155B29: | に。神殿御戸をひらきて。御心地よげに見へさせ給 |
J17_0155B30: | ひければ。此寺の佛法を守らむと御誓あり。寺門の |
J17_0155B31: | 滅亡いかばかりか御歎も深からんと存ずるに。何事 |
J17_0155B32: | にか御氣色快然なるやと申ければ。誠に其歎き深し |
J17_0155B33: | といへども。此事によりて眞實道心を發せる寺僧一 |
J17_0155B34: | 人ある事のよろこばしき也。堂舍佛閣は財寳あらば |