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J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0155A01: 心をやはらげて。佛法を信ずる方便とし給へり。靑
J17_0155A02: き事は藍より出て。藍よりも靑し。貴きことは佛よ
J17_0155A03: り出て佛よりも貴は。只是和光明神の利益也。我朝
J17_0155A04: の古德みな寺をたて給ひし時。必ず先鎭守を崇め。
J17_0155A05: 守護神を勸請する事は。和光の方便を離ては佛法立
J17_0155A06: 難きゆへ也。吾國に生を受けん人は本地の深き利益
J17_0155A07: を仰ぎ。和光の深き方便を信ずべきもの也。遠事は
J17_0155A08: 且くをく。承久逆亂の時。諸國庄薗をだしき所なか
J17_0155A09: りしかば。あやしみの賤男。賤の女までも。みな家
J17_0155A10: を捨て。佛寺の帳内にこもり。里を離て神社のつゐ
J17_0155A11: 垣のうちにあつまりき。尾張國あつ田の社に。國中
J17_0155A12: の上下羣集せし中に。或は昨日親にをくれたるもの
J17_0155A13: もあり。或は今日子を生るものもあり。神官宮人し
J17_0155A14: きりに制止すれどもかなはざりしかば。大明神をお
J17_0155A15: ろし奉りて御託宣をあふぐべしとて。御神樂をまい
J17_0155A16: らせ。諸人同心に祈請せしに。一の禰宜に託して。
J17_0155A17: 我天より下て此國に跡をたるる事は。萬人をはぐく
J17_0155B18: まんが爲也。然に今天魔國を亂り。人民心を失へり。
J17_0155B19: 和光の擁護豈此時にあらずや。折にこそよれ。忌ま
J17_0155B20: しきぞと仰られしかば。諸人一同にこゑをあげて。
J17_0155B21: 渴仰の涙をながし。隨喜の袖をしぼりき。これ全く
J17_0155B22: 後世の資糧にあらずといへども。當時擁護如此。何
J17_0155B23: 況後世菩提をいのらんにおきておや。されば今生を
J17_0155B24: いのるよりも。後生を申を殊に明神納受し給ふ證
J17_0155B25: 據。少少是を出さば。昔園城寺。山門の爲に燒拂は
J17_0155B26: れて堂塔僧坊佛像經卷のこる所なかりしかば。寺僧
J17_0155B27: も山野にまよひ。靈地も礎の跡のみ殘りし。或寺僧
J17_0155B28: 一人。新羅大明神へ參りて通夜したりし夜のゆめ
J17_0155B29: に。神殿御戸をひらきて。御心地よげに見へさせ給
J17_0155B30: ひければ。此寺の佛法を守らむと御誓あり。寺門の
J17_0155B31: 滅亡いかばかりか御歎も深からんと存ずるに。何事
J17_0155B32: にか御氣色快然なるやと申ければ。誠に其歎き深し
J17_0155B33: といへども。此事によりて眞實道心を發せる寺僧一
J17_0155B34: 人ある事のよろこばしき也。堂舍佛閣は財寳あらば

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