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J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0149A01: 暮にても。人のきくひまなからん所にて。常に如此
J17_0149A02: 申べし。所詮決定往生を欣。眞の念佛申さんずるか
J17_0149A03: ざらぬ心根は。たとへば盜人有て。人の財を思かけ
J17_0149A04: てぬすまんと思ふ心は底に深けれども。面はさりげ
J17_0149A05: なき樣にもてなして。構てあやしげなる色を。人に
J17_0149A06: 見えじと思はんがごとし。其ぬすむ心は人全くしら
J17_0149A07: ねば。すこしもかざらぬ心也。決定往生せんずる心
J17_0149A08: も又如此。人多くあつまり居たる中にても。念佛申
J17_0149A09: 色を人に見せずして。心に忘るまじきなり。其時の
J17_0149A10: 念佛は佛ならでは。誰か是を知べき。佛しらせたま
J17_0149A11: はば。往生なんぞ疑はんと仰られければ。敎阿彌陀佛
J17_0149A12: 申言。決定往生の法門こそ心得候ぬれ。既に悟りき
J17_0149A13: はめ侍り。今聊の不審も侍らず。此仰を承ざらまし
J17_0149A14: かば。此度の往生はあやふく候なまし。但此仰のご
J17_0149A15: とくにては。人の前にて念珠をくり。口をはたらか
J17_0149A16: す事は。有まじくや候らんと。上人曰。其又僻胤な
J17_0149A17: り。念佛者の本意は常念を詮とす。されば念念相續
J17_0149B18: せよとこそ勸られたれ。たとへば世間の人を見る
J17_0149B19: に。同人なれども豪臆あひわかれて。臆病の人に成
J17_0149B20: ぬれば。身のためくるしかるまじき聊のいかりをも。
J17_0149B21: おぢをそれて。にげ歸る。豪の者に成ぬれば。命を
J17_0149B22: 失ふべきこはきてきの。しかも迯かくれなば。助る
J17_0149B23: べきなれども。すこしも恐れず。一しざりもせざる
J17_0149B24: がごとし。是が樣に眞僞の二類あり。地體いつはり
J17_0149B25: 性にしてかざる心あるものは。身の爲に要なき聊の
J17_0149B26: 事をも。必ずいつはりかざる也。もとより眞の心あ
J17_0149B27: りて虚言せぬものは。聊の矯餝して。身の爲に大き
J17_0149B28: に其益あるべき事なれども。身の利益をばかへりみ
J17_0149B29: ず。底に眞ありて少もかざる心なし。これ皆本性に
J17_0149B30: うけて生れたる所也。その實の心のものの往生せん
J17_0149B31: とおもひて。念佛に歸したらんには。いかなる所。
J17_0149B32: いかなる人のまへにて申とも。すこしもかざる心あ
J17_0149B33: るまじければ。是眞實心の念佛にして。決定往生す
J17_0149B34: べき也。何ぞ是をいましめん。又地體は僞性にして。

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