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J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0148A01: 淺間しく無縁のものにて侍る間。在京もなど叶がた
J17_0148A02: く侍れば。相模國河村と申所に。相知たる者の侍る
J17_0148A03: 賴てまかり侍べし。今は歳も罷よりて侍れば。又見
J17_0148A04: 參に入べしとも覺え侍らず。本より無智の者にて侍
J17_0148A05: れば。甚深の法門を承て候とも。其甲斐あるべしと
J17_0148A06: も覺候はず。只詮を取て決定往生仕べき樣の御一言
J17_0148A07: を蒙らんと申ければ。上人の曰。先念佛には甚深の
J17_0148A08: 義といふことなし。念佛申者はかならず往生すと知
J17_0148A09: 計也。いかなる智者學生といふとも。宗にあらざら
J17_0148A10: ん甚深の義をば。爭造出していふべきや。甚深の義
J17_0148A11: あらんと云事。ゆめゆめ疑思ふべからず。但念佛は
J17_0148A12: 易き行なれば。申人は多けれども。往生する者すく
J17_0148A13: なきは。決定往生の故實をしらぬ故也。去月に又人
J17_0148A14: もなくして。御房と源空と只二人有しに。夜半計に
J17_0148A15: 忍やかに起居て念佛せしをば。御房はきかれしなと
J17_0148A16: 仰られければ。寢耳にさやらんと承候きと申ければ。
J17_0148A17: 其こそ軈て決定往生の念佛よ。虚假とてかざる心に
J17_0148B18: て申念佛は往生せぬ也。決定往生せんと思ふには。
J17_0148B19: かざる心なくして誠の心にて申べし。いふにかひな
J17_0148B20: きおさなきもの。もしは畜生などに向ては。かざる
J17_0148B21: 心はなけれども。朋同行はいふにおよばず。常にな
J17_0148B22: れたる妻子眷屬なれは共。東西を辨る程の者になり
J17_0148B23: ぬれば。其が爲にかならずかざる心は起る也。人の
J17_0148B24: 中にすまんには其心なき凡夫はあるべからず。すべ
J17_0148B25: て親も疎も貴も賤も。人に過たる往生の怨はなし。
J17_0148B26: それが爲にかざる心を發して。順次の往生を遂ざれ
J17_0148B27: ばなり。さりとて獨居も不叶。いかがして人目をか
J17_0148B28: ざる心なくして。誠の心にて念佛も申べきと云ふ。
J17_0148B29: 常に人にまじはりてしづまる心もなく。かざる心も
J17_0148B30: あらん者は。夜さしふけて見る人もなく。聞人もな
J17_0148B31: からん時。忍やかに起居て。百遍にても千遍にても。
J17_0148B32: 多少心にまかせて申さん念佛のみぞ。かざる心もな
J17_0148B33: ければ。佛意に相應して決定往生はとぐべき。此心
J17_0148B34: を得なば。必しも夜にも限らず。朝にても晝にても

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