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J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0147A01: ありと云は。正像末の三時の遺敎也。聖道門の修行
J17_0147A02: は正像の時の敎なるが故に。上根上智の輩にあらざ
J17_0147A03: れば用べからず。是を西國中國の宣旨とす。淨土門
J17_0147A04: の修行は末法濁亂の時敎也。故に下根罪惡の輩を器
J17_0147A05: とする也。是を奧州の宣旨とす。然則三時相應の宣
J17_0147A06: 旨。是を取たがへずば。敎として何の行か成ぜざら
J17_0147A07: んや。大原にして聖道淨土の論談ありしに。法門は
J17_0147A08: 牛角の論なりしかども。機根くらべには源空は勝た
J17_0147A09: りき。聖道門は深といへども。時過ぬれば今の機に
J17_0147A10: 叶はず。淨土門は淺きに似たりといへども。當根に
J17_0147A11: 叶易しといひし時。末法萬年餘敎悉滅。彌陀一敎利
J17_0147A12: 物偏增の道理にをれて人みな承諾し。念佛門に歸せ
J17_0147A13: り。然を今諸方の道俗を見聞するに。おほく有名無
J17_0147A14: 實の行を面に立て。互に嫉妬の瓧礫荊蕀みちふさが
J17_0147A15: りて。眞實の白道をさへたり。是豈悲の切なるにあ
J17_0147A16: らずや。
J17_0147A17: 敎阿彌陀佛事
J17_0147B18: 河内國に天野四郞とて。大強盜の張本にて。人を殺
J17_0147B19: し財をかすむるを業として。世をわたる者ありける。
J17_0147B20: 歳漸に闌て後。上人の念佛弘通の趣を承て心を發し。
J17_0147B21: 出家して敎阿彌陀佛とて。左右なき念佛者と成て。
J17_0147B22: 常には上人へ參て念佛の法門を承けるか。或時上人
J17_0147B23: へ參てけるに。人一人もなかりければ。今夜は御と
J17_0147B24: ぎ仕らんとて留ぬ。靜まりて後。夜半計と覺る程に。
J17_0147B25: 上人やはらおき居て。如法しのびやかに息の下に念
J17_0147B26: 佛し給かとおぼしき事有けり。よくよく忍び給ふ氣
J17_0147B27: 色を知て。つつむとすれど。かなはずして。敎阿彌
J17_0147B28: 陀佛。しはぶきしたりければ。此僧にしられぬとお
J17_0147B29: ぼしたる氣色にて。上人打臥たまひて。寢入たるよ
J17_0147B30: しにて其夜もあけぬ。敎阿彌陀佛は。此行法の樣を
J17_0147B31: 聞ておぼつかなさ限なけれど。憚を存て尋ね申さず。
J17_0147B32: さて遙に程經て後又參ければ。上人は持佛堂に御坐
J17_0147B33: して。聲を聞給ひて。敎阿彌陀佛か何事ぞこれへと
J17_0147B34: 仰られければ。持佛堂の縁に參りて。敎阿彌陀佛は

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