ウィンドウを閉じる

J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0146A01: 未弘我朝者此宗旨也。大同二年中春十九日執筆。
J17_0146A02: 嵯峨帝國母云云。文の心を御尋有けるに。上人のた
J17_0146A03: まはく。大同年中には。淨土敎門未本朝にわたらざ
J17_0146A04: りしかば。聖道門に對して淨土門を。未吾朝にひろ
J17_0146A05: まらざるは此の宗旨也とは云給へり。此國母は韋提
J17_0146A06: 希夫人の再誕也。不審候はずとぞ仰られける。此石は
J17_0146A07: 長六尺。廣四尺。文字八寸。古文の字也。宇治の寶
J17_0146A08: 藏にぞ納められける。實に不思議にこそ。
J17_0146A09: 淨土宗興行事
J17_0146A10: 上人の談義の砌にて語て曰。我今淨土宗を立る意趣
J17_0146A11: は。凡夫の往生を示さんが爲也。若天台の敎相によ
J17_0146A12: れば。凡夫往生をゆるすに似たりといへども。淨土
J17_0146A13: を判ずること至て淺薄なり。若法相の敎相によれば。
J17_0146A14: 淨土を判ずる事甚深なりといへども。全く凡夫往生
J17_0146A15: をゆるさず。諸宗門の所談異也といへども。惣して
J17_0146A16: 凡夫報土に生ずと云事をゆるさず。故に善導の釋義
J17_0146A17: に依て淨土宗を興ずる時。即凡夫報土に生るといふ
J17_0146B18: こと顯るる也。爰に人多く誹謗して曰く。必宗義を
J17_0146B19: 不立とも念佛往生を勸むべし。今宗義を立る事。是
J17_0146B20: 勝他の爲也と。若別の宗義をたてずば。何ぞ凡夫報
J17_0146B21: 土に生るる義をあらはさんや。若人來て念佛往生と
J17_0146B22: 云は。是何の敎。何の宗。何の師の心ぞと問はば。
J17_0146B23: 天台にも非ず。法相にもあらず。三論にも非ず。何
J17_0146B24: の宗。何の敎。何の師の意とか答へんや。是故に道
J17_0146B25: 綽。善導の意に依て。淨土宗を立。これ全く勝他の
J17_0146B26: 爲にあらずと云べし。
J17_0146B27: 信寂房の事
J17_0146B28: 播磨信寂房。上人へ參たりけるに。上人のたまひけ
J17_0146B29: るやう。入道殿ここに宣旨の二侍るを。取ちがへて
J17_0146B30: 筑紫の宣旨をば坂東へ下し。坂東の宣旨をば鎭西へ
J17_0146B31: くだしたらんには。人用べきかと。信寂房且く案じ
J17_0146B32: て。宣旨にて侍れども。たがへたらんをば。いかが
J17_0146B33: 用べきと申ければ。御房は道理を知る人かな。やが
J17_0146B34: てさぞ。帝王の宣旨とは。釋迦の遺敎なり。宣旨二

ウィンドウを閉じる