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J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0131A01: 轉敎口稱して。汝若不能念者。應稱無量壽佛と云時。
J17_0131A02: 意業忙然と成ながら。十聲。佛を稱すれば。聲聲に
J17_0131A03: 八十億劫の罪を滅して。見金蓮花猶如日輪の益にあ
J17_0131A04: づかる也。此義には機の道心一もなく。定散のいろ
J17_0131A05: どり一もなし。只知識の敎に隨ふ計にて。別のさか
J17_0131A06: しき心もなくて。白木に唱て。往生する也。たとへ
J17_0131A07: ば。をさなきものの手をとりて。物をかかせんがご
J17_0131A08: とし。豈小兒の高名ならんや。下下品の念佛も。又
J17_0131A09: かくのごとし。只知識と彌陀との御心にて。纔に口に
J17_0131A10: 唱て往生を遂也。彌陀の本願はわきて五逆深重の人
J17_0131A11: の爲に難行苦行せし願なるゆへに。失念の位の白木
J17_0131A12: の念佛に佛の五劫兆載の願行つづまりて。無窮の生
J17_0131A13: 死を一念につづめて。僧祇の苦行を一聲に成ずる也。
J17_0131A14: 又大經の三寶滅盡の時の念佛も。白木の念佛也。其
J17_0131A15: 故に大小乘の經律論。みな龍宮におさまる。三寶悉
J17_0131A16: く滅しなん。閻浮提にはただ冥冥たる衆生の。惡の
J17_0131A17: 外には善と名だにも。更にあるべからず。戒行を敎
J17_0131B18: たる律も滅しなば。何の處によりて。止惡修善の心
J17_0131B19: もあるべき。菩提心を説ける經卷。先立て滅せば。
J17_0131B20: いづれの經によりてか菩提心をも發べき。此理を知
J17_0131B21: れる人も世になければ。習て知べき道もなし。故に
J17_0131B22: 定散の色どりは。皆失はてたる白木の念佛。六字の
J17_0131B23: 名號ばかり。世には住すべき也。其時。聞て一聲せ
J17_0131B24: んもの。皆當に往生すべしと説けり。此機の一念十
J17_0131B25: 念して往生は。佛法の外なる人の。只白木の名號の
J17_0131B26: 力にて往生すべき也。然に當時は大小の經論も盛な
J17_0131B27: れば。彼時の衆生には事の外にまれなる機也と。い
J17_0131B28: ふ人もあれども。下根の我等は。三寶滅盡の時の人
J17_0131B29: にかはる事なし。世はなほ佛法流布の世なれども。
J17_0131B30: 身はひとり三學無分の機也。大小の經論あれども。
J17_0131B31: 或は學せんとおもふものもなし。かかる無道心の機
J17_0131B32: は。佛法にあえるかひもなき身也。三寶滅盡の世な
J17_0131B33: らば。力及ばぬ方もあるべし。佛法流布の世に生れ
J17_0131B34: ながら。戒をも持たず。定惠をも修行せざるにこそ。

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