浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J17_0130A01: | 親季法名證玄の息也。一門のよしみ深くして。幼稚の昔 |
J17_0130A02: | より。久我内府通親公の猶子たりき。漸く元服の沙 |
J17_0130A03: | 汰の侍りしに。童子ふかく菩提心に住して。偏に出 |
J17_0130A04: | 家をのぞむ。父母更に是をゆるされず。于時生母忍 |
J17_0130A05: | て。一條のもどり橋にて。橋占をとわれしに。一人 |
J17_0130A06: | の僧ありて。眞觀淸淨觀。廣大智惠觀。悲觀及慈觀。 |
J17_0130A07: | 常願常瞻仰と誦し。東より西へ行。生母これをきく |
J17_0130A08: | に。落涙甚し。内府此由をきき給ひて。宿善の内に催 |
J17_0130A09: | す事を感じて。出家をゆるされし時。師範の沙汰侍 |
J17_0130A10: | りしに。童子申さく。願は。法然上人の弟子たらん。 |
J17_0130A11: | 不然は出家更に其詮なしと。翌建久元年。十四歳に |
J17_0130A12: | して。遂に上人の室に入。常隨給仕の弟子として。 |
J17_0130A13: | 淨土の法門殘る所なし。人の心得やすからん爲に。 |
J17_0130A14: | 白木の念佛と云事を常に仰られき。自力の人は。念 |
J17_0130A15: | 佛をいろどる也。或は大乘の悟をもていろどり。或 |
J17_0130A16: | はふかき領解をもていろどり。或は戒をもていろど |
J17_0130A17: | り。或は身心を調るをもていろどらんとおもふ也。 |
J17_0130B18: | 定散の色どりある念佛をば。しをほせたる。往生疑 |
J17_0130B19: | なしとよろこび。色どりなき念佛をば。往生はゑせ |
J17_0130B20: | ぬと歎也。なげくも。よろこぶもともに自力の迷也。 |
J17_0130B21: | 大經の法滅百歳の念佛。觀經の下三品の念佛は。何 |
J17_0130B22: | の色どりもなき白木の念佛也。本願の文の中の至心 |
J17_0130B23: | 信樂を稱我名號と釋し給へるも。白木になりかへる |
J17_0130B24: | 心也。習處の觀經の下品下生の機は。佛法世俗の二 |
J17_0130B25: | 種の善根なき無善の凡夫なるゆへに。何のいろどり |
J17_0130B26: | もなし。況。死苦に責られて。忙然と成上は。三業 |
J17_0130B27: | ともに正體なき機也。一期は惡人なるゆへに。平生 |
J17_0130B28: | の行をさりとも馮むべきにもなし。臨終には死苦 |
J17_0130B29: | にせめられけるゆへに。止惡修善の心も。大小權實 |
J17_0130B30: | の悟も。かつて心にをかず。起立塔像の善も。此儀 |
J17_0130B31: | には叶べからず。捨家棄欲の心も。此時はおこり難 |
J17_0130B32: | し。誠に極重の惡人也。更に他の方便ある事なし。 |
J17_0130B33: | 若他力の領解もやある。名號の不思議をもや念じつ |
J17_0130B34: | べきと敎れども。苦に責られて。次第に失念する間。 |