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J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0130A01: 親季法名證玄の息也。一門のよしみ深くして。幼稚の昔
J17_0130A02: より。久我内府通親公の猶子たりき。漸く元服の沙
J17_0130A03: 汰の侍りしに。童子ふかく菩提心に住して。偏に出
J17_0130A04: 家をのぞむ。父母更に是をゆるされず。于時生母忍
J17_0130A05: て。一條のもどり橋にて。橋占をとわれしに。一人
J17_0130A06: の僧ありて。眞觀淸淨觀。廣大智惠觀。悲觀及慈觀。
J17_0130A07: 常願常瞻仰と誦し。東より西へ行。生母これをきく
J17_0130A08: に。落涙甚し。内府此由をきき給ひて。宿善の内に催
J17_0130A09: す事を感じて。出家をゆるされし時。師範の沙汰侍
J17_0130A10: りしに。童子申さく。願は。法然上人の弟子たらん。
J17_0130A11: 不然は出家更に其詮なしと。翌建久元年。十四歳に
J17_0130A12: して。遂に上人の室に入。常隨給仕の弟子として。
J17_0130A13: 淨土の法門殘る所なし。人の心得やすからん爲に。
J17_0130A14: 白木の念佛と云事を常に仰られき。自力の人は。念
J17_0130A15: 佛をいろどる也。或は大乘の悟をもていろどり。或
J17_0130A16: はふかき領解をもていろどり。或は戒をもていろど
J17_0130A17: り。或は身心を調るをもていろどらんとおもふ也。
J17_0130B18: 定散の色どりある念佛をば。しをほせたる。往生疑
J17_0130B19: なしとよろこび。色どりなき念佛をば。往生はゑせ
J17_0130B20: ぬと歎也。なげくも。よろこぶもともに自力の迷也。
J17_0130B21: 大經の法滅百歳の念佛。觀經の下三品の念佛は。何
J17_0130B22: の色どりもなき白木の念佛也。本願の文の中の至心
J17_0130B23: 信樂を稱我名號と釋し給へるも。白木になりかへる
J17_0130B24: 心也。習處の觀經の下品下生の機は。佛法世俗の二
J17_0130B25: 種の善根なき無善の凡夫なるゆへに。何のいろどり
J17_0130B26: もなし。況。死苦に責られて。忙然と成上は。三業
J17_0130B27: ともに正體なき機也。一期は惡人なるゆへに。平生
J17_0130B28: の行をさりとも馮むべきにもなし。臨終には死苦
J17_0130B29: にせめられけるゆへに。止惡修善の心も。大小權實
J17_0130B30: の悟も。かつて心にをかず。起立塔像の善も。此儀
J17_0130B31: には叶べからず。捨家棄欲の心も。此時はおこり難
J17_0130B32: し。誠に極重の惡人也。更に他の方便ある事なし。
J17_0130B33: 若他力の領解もやある。名號の不思議をもや念じつ
J17_0130B34: べきと敎れども。苦に責られて。次第に失念する間。

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