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J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0119A01: 安三年癸巳生年四十三にして。官職を辭して。大原に
J17_0119A02: 籠居。十箇年の春秋を送て後。壽永二年九月日。日
J17_0119A03: 吉の行幸の時。座主明雲賞をゆづりて法印に叙せら
J17_0119A04: るといへども。かたく松門を閉て敢てことにしたが
J17_0119A05: はず。只生死の出難き事をのみなげく。其後。衆徒。
J17_0119A06: 推て擧申によりて。文治六年庚戌三月七日。天台座主
J17_0119A07: に補せらるといへども。承諾せざる間。勅使大原へ
J17_0119A08: むかひて。宣命を下て。座主職を授くる。遂に召出
J17_0119A09: されて。同五月廿四日。最勝講の證義をつとめ。同
J17_0119A10: 廿八日。權僧正に任ず。然て。良すれば。尚隱遁の
J17_0119A11: 思ひふかくして。常には永辨法印と出離解脱の法門
J17_0119A12: をのみ談ぜられける。或時。永辨法印。かくのごと
J17_0119A13: きの事は。法然上人にくわしく御尋あるべきよしを
J17_0119A14: 申ければ。座主。上人に對面ありて。今度いかでか
J17_0119A15: 生死を解脱し侍るべきとの給ふに。上人。いかやう
J17_0119A16: にも御計には過べからずと。座主又申されけるは。誠
J17_0119A17: に然也。但し先達にましませば。思定給へる旨あら
J17_0119B18: ば。しめし給へと也との給へば。其時。自身の爲に
J17_0119B19: は。聊思定たる旨侍り。ただはやく極樂の往生をとげ
J17_0119B20: んと也。座主又申さるる樣。順次の往生遂がたきに
J17_0119B21: よりて。しゐてたづね侍り。いかがたやすく往生を
J17_0119B22: とげんや。上人こたへ給はく。成佛は難しといへど
J17_0119B23: も。往生は得やすし。道綽。善導の心によらば。佛
J17_0119B24: の願力を仰で。強縁とするゆへに。罪惡の凡夫。淨
J17_0119B25: 土に生ず云云。其後更に言説なくして。上人歸りた
J17_0119B26: まひて後に。法然房は智惠深遠也といへども。聊偏
J17_0119B27: 執の咎ありと。座主の仰られけるを。上人歸りきき
J17_0119B28: 給ひて。我しらぬ事を云には。必疑心をおこす也と
J17_0119B29: の給ひければ。座主又此事を聞て。誠に然也。我顯
J17_0119B30: 密の敎に稽古を積といへども。併これ名利のために
J17_0119B31: して。淨土を心に欣ぬ故に。道綽。善導の釋義を伺
J17_0119B32: ず。法然房にあらずば。誰の人か如此いはんや。耻
J17_0119B33: べしべしとて。百日の間大原に籠居して。淨土の章疏
J17_0119B34: を見立給ひてのち。儀を立てて。上人に示て云。我粗

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