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J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0117A01: 趣をのべ給ふに。重源左右なく領狀す。よて擧し申
J17_0117A02: されければ。大勸進の職に補任せられけり。重源も
J17_0117A03: し此大勸進成就したらば。一定の權者かな迚。上人
J17_0117A04: の給ひける。重源は伊勢大神宮にまいりて。この願
J17_0117A05: 成就すべくば。其瑞相をしめし給へと祈請しける
J17_0117A06: に。三七日にあたりける五更の天に。唐裝束したる
J17_0117A07: 貴女の。御手より方寸の玉をたまわると。示現をか
J17_0117A08: うぶりて。夢さめてのち。これを見るに。夢に見る
J17_0117A09: 所の玉。袖の上にあり。重源悅で頭にかけられけり。
J17_0117A10: 其後。すすめさるに。綾羅錦繡。錢貨米穀。心にま
J17_0117A11: かせければ。ほどなく金銅の本尊を。本のごとく鑄
J17_0117A12: たてまつりけるに。御戒の布施に。上人に奉りける
J17_0117A13: 本三位中將の双紙筥の鏡を。かの孝養のためとし
J17_0117A14: て。上人より俊乘房へ送りつかはしければ。金銅の
J17_0117A15: 本尊を鑄奉りける爐の中へ入給ひけるに。おどりか
J17_0117A16: へりて。わきあはざりけるを。三度まで入れけれど
J17_0117A17: も。爐の中よりふきいだして。遂にたまらざりけれ
J17_0117B18: ば。且は中將の罪障懺悔のため。且は未來の不審を
J17_0117B19: ひらかん爲に。件の鏡は。大佛殿の正面。坤の柱に
J17_0117B20: うちつけられき。炎魔大王の淨波梨の鏡は。罪業の
J17_0117B21: かげをうかべ。目連尊者の所持の鏡は。三世の事を
J17_0117B22: てらす。百練の鏡は。ひかりも世にこへ。うつれる
J17_0117B23: 影もあざやか也。今此重衡卿の鏡は。ただ罪業のか
J17_0117B24: げ斗にや。うつらんと。身の毛もよたつぞ恐しきと
J17_0117B25: 覺へける。

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