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J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0115A01: に入べき故に侍ける。重衡必しも大佛殿を燒奉らん
J17_0115A02: といふ所存は候はず。故入道の命そむき難により
J17_0115A03: て。南都へむかひ侍し時。いかなるものかしつら
J17_0115A04: ん。近邊の房舍に火をかけ侍しに。時しも風はげし
J17_0115A05: くして。大伽藍を灰燼となし奉し事は。不及力次
J17_0115A06: 第也。重衡發心せぬ事なればとは存ずれども。時の
J17_0115A07: 大將軍にて侍しうへは。責一身に歸する事にて侍る
J17_0115A08: なれば。重衡一人が。罪業につもりて。無間の重苦
J17_0115A09: はうたがひあらじと存知せり。一門の人人多く侍し
J17_0115A10: に。重衡一人いけどられて。ここかしこに耻をさら
J17_0115A11: すも。併其報とこそおぼへ侍れ。かくて命終せば火
J17_0115A12: 血刀の苦果。敢てうたがひなし。出家こそ心ざす所
J17_0115A13: なれども。ゆるされなければ不及力。只本とりを
J17_0115A14: つけながら。戒をうけ候はん事いかが侍べき。かか
J17_0115A15: る惡人の助かりぬべき方法侍らば。示給へと。うち
J17_0115A16: くどき申されければ。上人涙をながして。暫く物も
J17_0115A17: の給はず。良久ありてのたまひけるに。誠御出家社功
J17_0115B18: 德廣大なれども。御ゆるされなくば。四部の弟子な
J17_0115B19: れば。御髮つけながらも。戒を持せ給はん事。子細
J17_0115B20: 有べからずとて。戒を授たてまつりて。粗存知の旨
J17_0115B21: を説たまふ。難受人身をうけながら。むなしく三
J17_0115B22: 途に歸り給はんことは。かなしみてもなを餘あり。
J17_0115B23: 歎ても又盡べからず。然に穢土を厭。淨土を欣ひ。
J17_0115B24: 惡心をすて。善心を發し給はん事は。三世の諸佛も
J17_0115B25: 定めて隨喜し給ふべし。其にとりて出離の道まちま
J17_0115B26: ちなりといへども。末法濁亂の機には。稱名をもて。
J17_0115B27: 勝たりとす。罪業深重の輩も。愚癡闇鈍の族も。唱
J17_0115B28: ればむなしからざるは。彌陀の本願也。罪ふかけれ
J17_0115B29: ばとて卑下し給べからず。十惡五逆も囘心すれば往
J17_0115B30: 生し。一念十念も心をいたせば來迎す。經には四重
J17_0115B31: 五逆諸衆生。一聞名號必引接と説き。釋には忽遇往
J17_0115B32: 生善知識。急勸專稱彼佛名と判ぜり。たとひ無間の
J17_0115B33: 重罪なりといふとも。稱名の功德にはかつべから
J17_0115B34: ず。利劒即是彌陀號。たもてば魔縁近付す。一聲稱

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