浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J17_0114A01: | あぐ。諸人耳目を驚すよし申入る。其日時を勘るに |
J17_0114A02: | 彼闍梨領家へまいりて。此池を申請て。罷出ける |
J17_0114A03: | 時日也。誠にふしぎの事也。委事は彼家の記にあり。 |
J17_0114A04: | 智惠のあるがゆへに。生死の出がたき事をしり。道 |
J17_0114A05: | 心あるがゆへに。佛の出世にあはむ事をねがふ。然と |
J17_0114A06: | いへども。いまだ淨土の法門をしらざるがゆへに。 |
J17_0114A07: | 如此意樂の住する也。我其時此法門をたづね得た |
J17_0114A08: | らましかば。信不信は不知。申侍なまし。極樂に往 |
J17_0114A09: | 生の後は。十方の國土に。心にまかせて經行し。一 |
J17_0114A10: | 切の諸佛を。おもひにしたがひて供養す。何ぞかな |
J17_0114A11: | らずしも穢土に久く處する事をねがはんや。彼闍梨 |
J17_0114A12: | 遙に慈尊三會の曉を期して。五十六億七千萬歳の |
J17_0114A13: | 間。此池に住給はん事を。上人恆に悲み給き。當時 |
J17_0114A14: | に至るまでも。靜成夜は振鈴の音きこゆるとぞ申傳 |
J17_0114A15: | へ侍ける。上人悲みのあまりに。彼所へ下て。池の |
J17_0114A16: | 邊にのぞみて。稱名念誦懇にして囘向せられけり。 |
J17_0114A17: | 一子平等の慈悲は。薩埵の本誓也といへども。累日 |
J17_0114B18: | 斗藪の懇念は。凡夫の所爲にあらざらんをや。 |
J17_0114B19: | 重衡卿の事 |
J17_0114B20: | 治承四年庚子十二月廿八日。平家の本三位中將重衡 |
J17_0114B21: | 卿。父大政入道の命によりて。南都をせめし時。東 |
J17_0114B22: | 大寺に火をかけしかば。大伽藍忽に灰燼となりに |
J17_0114B23: | き。其後。元曆元年二月七日。一谷の合戰の時。本 |
J17_0114B24: | 三位の中將生とられて。都へのぼりて。大路をわた |
J17_0114B25: | されて。さんざんの事共のありし時。法然上人を招 |
J17_0114B26: | 請して。後生菩提の事を申合られしに。上人。中將 |
J17_0114B27: | のおはする所へ。さし入て見給へば。さしもはなや |
J17_0114B28: | かにきよけに見へ給ひし人の其とも不覺。やせお |
J17_0114B29: | とろへて。裝束は紺村この。直垂小袴に。折烏帽子。 |
J17_0114B30: | ひきたてたるをき給へり。目もあてられぬありさま |
J17_0114B31: | なれば。上人心よはくも。涙のうかみけるを。かく |
J17_0114B32: | ては。あしかりなむと。思しづめて。さらぬ樣にも |
J17_0114B33: | てなして對面あり。三位中將なくなく申されける |
J17_0114B34: | は。今度生ながらとられけるは。今一度上人に見參 |