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J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0114A01: あぐ。諸人耳目を驚すよし申入る。其日時を勘るに
J17_0114A02: 彼闍梨領家へまいりて。此池を申請て。罷出ける
J17_0114A03: 時日也。誠にふしぎの事也。委事は彼家の記にあり。
J17_0114A04: 智惠のあるがゆへに。生死の出がたき事をしり。道
J17_0114A05: 心あるがゆへに。佛の出世にあはむ事をねがふ。然と
J17_0114A06: いへども。いまだ淨土の法門をしらざるがゆへに。
J17_0114A07: 如此意樂の住する也。我其時此法門をたづね得た
J17_0114A08: らましかば。信不信は不知。申侍なまし。極樂に往
J17_0114A09: 生の後は。十方の國土に。心にまかせて經行し。一
J17_0114A10: 切の諸佛を。おもひにしたがひて供養す。何ぞかな
J17_0114A11: らずしも穢土に久く處する事をねがはんや。彼闍梨
J17_0114A12: 遙に慈尊三會の曉を期して。五十六億七千萬歳の
J17_0114A13: 間。此池に住給はん事を。上人恆に悲み給き。當時
J17_0114A14: に至るまでも。靜成夜は振鈴の音きこゆるとぞ申傳
J17_0114A15: へ侍ける。上人悲みのあまりに。彼所へ下て。池の
J17_0114A16: 邊にのぞみて。稱名念誦懇にして囘向せられけり。
J17_0114A17: 一子平等の慈悲は。薩埵の本誓也といへども。累日
J17_0114B18: 斗藪の懇念は。凡夫の所爲にあらざらんをや。
J17_0114B19: 重衡卿の事
J17_0114B20: 治承四年庚子十二月廿八日。平家の本三位中將重衡
J17_0114B21: 卿。父大政入道の命によりて。南都をせめし時。東
J17_0114B22: 大寺に火をかけしかば。大伽藍忽に灰燼となりに
J17_0114B23: き。其後。元曆元年二月七日。一谷の合戰の時。本
J17_0114B24: 三位の中將生とられて。都へのぼりて。大路をわた
J17_0114B25: されて。さんざんの事共のありし時。法然上人を招
J17_0114B26: 請して。後生菩提の事を申合られしに。上人。中將
J17_0114B27: のおはする所へ。さし入て見給へば。さしもはなや
J17_0114B28: かにきよけに見へ給ひし人の其とも不覺。やせお
J17_0114B29: とろへて。裝束は紺村この。直垂小袴に。折烏帽子。
J17_0114B30: ひきたてたるをき給へり。目もあてられぬありさま
J17_0114B31: なれば。上人心よはくも。涙のうかみけるを。かく
J17_0114B32: ては。あしかりなむと。思しづめて。さらぬ樣にも
J17_0114B33: てなして對面あり。三位中將なくなく申されける
J17_0114B34: は。今度生ながらとられけるは。今一度上人に見參

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