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J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0113A01: て。小國也。しかれども。佛敎の靈驗は。大國にも
J17_0113A02: よらず。小國にもよらず。聞法の得益は。上代とも
J17_0113A03: いはず。末代ともいはず。若上人の德あらずば。い
J17_0113A04: かでか下凡の信をすすめん。希代の美談なりとぞ。
J17_0113A05: 時の人申侍ける。
J17_0113A06: 皇圓阿闍梨事
J17_0113A07: 功德院阿闍梨皇圓。自身の分際を斗。たやすく此度
J17_0113A08: 生死を出べからず。若度度生をかへば。隔生即忘の
J17_0113A09: ゆへに。定めて佛法をわすれんか。不如。長命の
J17_0113A10: 報をうけて。慈尊の出世に逢奉らんと思て。命長き
J17_0113A11: ものを勘るに。鬼神よりも。虵道はまされりとして。
J17_0113A12: 虵にならんと誓て。死期の時。水を乞て掌に入て終
J17_0113A13: にけり。其後。皇圓阿闍梨。花山院大政大臣忠雅公
J17_0113A14: の御許へまいりて。聊申入べき事侍りて。參たるよ
J17_0113A15: し。申入ける間。彼闍梨は已に逝去の人也。いかで
J17_0113A16: かここに來るべきや。人たがへにこそとて。尋させ
J17_0113A17: られけるに。功德院の阿闍梨皇圓と申ものにて侍る
J17_0113B18: よし。重て申ける間。不審のあまりに出向て。對向
J17_0113B19: せられけるに。皇圓阿闍梨の條。無疑間。抑御逝去の
J17_0113B20: よし承り侍は。ひが事にやと仰られければ。闍梨の
J17_0113B21: 申さく。逝去は勿論也。それに付て聊所望の事有て
J17_0113B22: まいり侍り。其故は。適適人身を受といへども。二
J17_0113B23: 佛の中間にさへ生て。猶生死に輪迴せん事の悲しく
J17_0113B24: 侍れば。長命の報を感じて。慈尊の出世を待奉らん
J17_0113B25: が爲に。誓て虵身をうくる所に。大海は中夭の恐あ
J17_0113B26: り。池にすまんとすれば。主なき所なし。遠江國笠
J17_0113B27: 原の庄は御領也。彼庄に櫻の池といふ池あり。申あ
J17_0113B28: づかりて居所と定て。閑に慈尊の出世を待奉らんが
J17_0113B29: 爲に。まいりて侍るよし申ければ。子細に不及。そ
J17_0113B30: れの心に有べしと。御返事を承て。たつと見るほど
J17_0113B31: に。やがて見えず成ぬ。ふしぎの事也と口遊する所
J17_0113B32: に。幾程の日數をへずして。笠原の庄よりしるし申
J17_0113B33: けるは。櫻の池に雨降らずして。俄に洪水出で。風
J17_0113B34: ふかずして忽に大浪たちて。池の中の塵悉くはらひ

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